有害性の低い臭気による不快感には、マスキング効果による不快感の低減を行えば換気を可能な範囲で削減できて空調負荷削減を図ることができるという考えに基づいて、これまでとは異なる複合化学物質臭同士での検討を行った。悪臭である被マスキング臭には住宅内の悪臭物質Diacetyl、Isovaleric acid 、Acetaldehyde、1-octen-3-olの混合臭を設定して5段階の濃度条件とした。マスキング臭はピンクグレープフルーツ精油を5段階の濃度条件に設定して、それらの組合せ計25条件とそれぞれの単体を合わせた全35条件について20名の実験参加者で主観評価実験を実施した。評価項目はにおいの強さ、快・不快、印象、許容の可否とした。混合臭の臭気強度は、低濃度の被マスキング臭ではマスキング臭濃度と正の相関で影響が大きく、高濃度条件ではマスキング臭濃度と負の相関で影響が非常に小さい傾向だった。快・不快度はマスキング臭の最高濃度を含む組合せ臭ではマスキング臭の影響が非常に大きく快側評価だったが、被マスキング臭が高濃度の組合せ臭ではその影響が小さかった。既報にて提案した被マスキング臭とマスキング臭の臭気強度差と、混合臭と被マスキング臭の快・不快度差との相関を検討し、これまでの例と比較してやや高めの相関で、被マスキング臭が明確な悪臭かつマスキング臭が明確な芳香である場合には高相関になると推測された。混合臭に含まれる被マスキング臭の濃度条件およびマスキング臭の濃度条件ごとの比較も行い、同一の被マスキング臭とマスキング臭の組合せであれば、被マスキング臭の濃度は回帰線の傾きに大きな影響を及ぼさない傾向にあった。これは、本マスキング設計資料が悪臭の濃度に依らず、悪臭とマスキング剤との組合せのみで活用できることを示し、今後もケーススタディを重ねることで本資料を活用できる環境に向かうと考えられた。
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