研究課題/領域番号 |
20K04831
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山邊 友一郎 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (70362762)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IoT / センシング / 災害時状況把握 / 救助活動支援システム |
研究実績の概要 |
②建物の被災程度を精度よく推定可能なIoT・センシングシステムの構築を目的として、機械学習を用いた被災時における室内家具の転倒判定に関する研究を実施した。実験では、部屋模型と3種類の家具模型を用いて、家具の転倒画像を撮影し、機械学習フレームワークで判定を行った。転倒に関しては、判定の精度に関わる条件を探るために、撮影角度を変化させた場合と家具の色を変化させた場合の2パターンに分けて実験した。撮影角度は天井中央から撮影した場合と天井隅から撮影した場合、家具の色は天板にのみ赤い紙を貼った場合と天板と3側面(底面と背面以外の4面)に茶色の紙を貼った場合をそれぞれ比較した。また、用意した画像は学習用と検証用に区分し判定した。その結果、撮影角度に関しては、斜めから撮影した時より真上から撮影した時の方がやや正解率が高い結果となった。これは真上から撮影した方が空間を平面的に処理しやすくなったからだと考える。家具の色に関しては、正解率がほぼ同じであった。これは、いずれの場合も転倒前と転倒後で上面の色が変化したためと考える。 ③要救助者・建物の被災程度に関する情報の有無が災害救助活動支援システムの効果的な運用に及ぼす影響を検証するため、MASを用いた被災情報の有無を考慮した災害救助シミュレーションを実施した。シミュレーションを実施した結果、以下のことを明らかにした。①在室者の有無に関する情報を取得できた場合、要救助者がいるかどうかの捜索活動を行う時間を短縮することができ、それに伴って救助完了時間と最終的な死亡者数を改善することができた。②健康状態に関する情報を取得できた場合、緊急度の高い住民を優先的に救助することで、情報がない場合と比べて死亡者数を約 20%減少することができた。以上より、救助隊の取得できる情報の有無が、救助活動にどのように影響するのかを結果として得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①在室者の有無を精度よく推定可能なIoT・センシングシステムの構築については、2020年度に実施した。 ②建物の被災程度を精度よく推定可能なIoT・センシングシステムの構築については、2021年度に実施した。 ③要救助者・建物の被災程度に関する情報の有無が災害救助活動支援システムの効果的な運用に及ぼす影響の検証については、2021年度に実施した。 上記のとおり、研究計画調書で予定した研究項目に関しては、順調に実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたとおり、予定していた研究項目については、基礎的な研究を開始できているが、さらに研究内容を深化させ、有益な知見を得ることを目的として、研究を進めていく予定である。具体的には、③要救助者・建物の被災程度に関する情報の有無が災害救助活動支援システムの効果的な運用に及ぼす影響の検証について、以下の検討を行う予定である。 ・実際に存在する都市に本システムを適用してシミュレーションを行うことで、より現実に近い救助活動を再現する。 ・健康状態の推移について、確率的な遷移システムを導入し、より滑らかな挙動を再現する。 ・救助隊の行動・判断ルールを改善し、情報の有無に基づいたシミュレーションの充実をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ禍による移動制限のため、国内および海外の旅費を使用できなかったため。 (使用計画)可能であれば、国内および海外の旅費に使用する予定であるが、2022年度も同様の状況が続けば、実験物品の購入にあてる予定である。
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