研究課題
課題II(欧州における広域計画策定技法の事例研究)について、人口変化と地域政策に関する日EU共同研究への参加を通じて、欧州の複数の都市・地域における人口変化に対する政策について情報を収集した。日本およびEUの事例比較からは、コンパクトシティの空間コンセプトの提示、近隣自治体との協力の重要性が見いだされ、特に欧州においては空間開発戦略(目指す都市・地域構造と空間計画)、スマート・ソリューションに加えて、関係主体の役割・協働、地域ガバナンスが強調されている点がみられた。本共同研究の成果は、2021年12月にEUのウェブサイトで公開された。課題I(日本における人口減少局面での地域計画)に関しては、人口減少局面での都市空間の変化であるスポンジ化(空き地・空き家の発生)対策に関する研究を行った。福岡県の事例研究から、スポンジ化対策をコンパクト・プラス・ネットワークの中で位置づけ、低未利用公的不動産の利活用の取り組みを進めていること、市町横断的な物件データベースの構築を福岡県が行うことで各自治体で部分的に発生する低未利用地を民間事業者が活用しやすいようにするという広域自治体として役割を明らかにした。加えて、日本において気候変動による豪雨災害等のリスク軽減と、人口減少局面におけるコンパクトシティ政策との関係が議論されていることに鑑み、両者を結びつける流域圏プランニングにも視野を広げている。今年度はその準備として、日本の国土政策における流域圏構想を振り返り、広域計画・広域連携と流域圏の関係について、日本でも流域が広域連携の枠組みとなりうること、イングランドでは地域計画において流域が考慮されている一方で、日本の広域地方計画ではその機能が弱いことを指摘した。
4: 遅れている
新型コロナの感染状況により、今年度も海外渡航ができず、当初予定していた課題IIに係る調査が実施できなかった。そのため、「遅れている」と判断した。
今後は、課題II「欧州における広域計画策定技法の事例研究」を中心に研究を進める計画である。特に欧州では、広域計画の役割に関して様々な議論がみられ、これらの既往文献も含めたレビューを行い、都市圏の特性も勘案して事例を選定し分析を行いたい。ただし、新型コロナにより海外調査の実施は依然として見通せない。日EU共同研究に参加された欧州の研究者等、オンラインによる予備的な調査に加え、状況によっては研究期間の延長も含めて検討したい。
予算計画では、国外の現地調査のための旅費、通訳謝金、テープ起こしでの使用を想定していた。しかし、新型コロナの影響で海外渡航ができず、現地調査が行えなかった。そのため、旅費、人件費・謝金、その他の費目で未使用額が生じた。次年度も先行きが見通せないため、現段階では計画通りに使用する予定であるが、感染拡大状況を踏まえて検討したい。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 図書 (1件)
都市計画報告集
巻: 20 ページ: 438-442
計画行政
巻: 44-4 ページ: 31-36