研究課題/領域番号 |
20K04838
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
卯月 盛夫 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30578472)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドイツの都市計画 / 無作為抽出 / 計画細胞会議 / 市民会議 / 住民投票 / 合意形成 / 市民参加 / 民主主義 |
研究実績の概要 |
無作為抽出で選ばれた市民によるPZ(プラーヌングツェレ、計画細胞会議)の38事例に関する調査を継続的に行った。ドイツ国内ではこの25年間で、平均すると1年に1から2回実施され、州ではバイエルン州が6事例と最も多く、市ではベルリン市が3事例、ミュンヘン市が3事例となっている。PZのテーマは多岐にわたっているが、都市計画が12事例とほぼ1/3を占めている。また、対象年齢も近年は14才以上とするケースが増えていて、こどもと青少年の意見が重要視される傾向にある PZ実施の背景は大きく二つに分けられる。ひとつはこれから実施する施策に関して無作為抽出で選ばれた市民と意見交換をしながら施策の方向を決めていくタイプ①。もうひとつは、ある施策に関して市議会や行政、市民の意見が分かれ、施策の決定が難しい場合に、無作為抽出の市民と共に再度丁寧に議論をし直して、新たな方向をみつけていくタイプ②がある。いずれにしても、市民の平均的な意向を確かめ、その後の施策に生かす重要な手法ということができる。住民投票との関係でいえば、タイプ①ではPZの後に、確認の意味で住民投票を行うケースがある。またタイプ②では住民投票によって意見の対立が明らかになった後にPZを行っているケースがある。 さらに近年では、州や市レベルではなく、ドイツ連邦レベルでBuergerrat(ビュルガーラート、市民会議)が開催されている。たとえば、2021年1から2月にはドイツ全土で無作為抽出の160人の市民によって「世界におけるドイツの役割」というテーマで50時間のオンラインセッション形式で実施されている。名称はPZと称されてはいないが、そのプロセスはほとんど同じで、参加者の規模が大きくなっている。このことから、無作為抽出の市民による会議は、地区レベルの計画から市全域、さらに州や連邦レベルの施策まで、実に幅広く応用されていることがわかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1997年から2019年までに実施されたPZ38事例に関して、プロジェクト名称、実施年月日、州と都市名、テーマ、発注者、テーマ、目的、実施機関、具体的なプログラム、無作為抽出の方法、参加者の人数・年齢・属性、実施後の動き等に関してインターネットを中心に文献調査を行い、一覧表を作成した。 2021年度においては、38事例から都市計画をテーマとする特徴的なPZの事例から以下の6つを抽出し、現地調査を行う予定であったが、コロナ禍により訪独が困難となったため、行政やマスコミ資料等のインターターネット調査を行った。6事例はいずれも、PZを政策決定に際して積極的に生かしていることがわかった。①ベルリン市内3地区における地区マネジメント計画(1999年から2000年)、② オスナブリュック市のNeumarkt広場のデザイン(2001年), ③ヴァインハイム市の土地利用計画の変更計画、PZ実施後の住民投票(2012年)、④ ベルリン市の旧飛行場Tenpelhofer Feldの跡地利用計画、PZ実施後の住民投票(2013年)、⑤ミュンヘン市のViktulianmarkt広場の改修計画(2017年)、⑥ボン市のスイミングプール計画(2019年) 連邦レベルのBuergerrat(市民会議)は、必ずしも都市計画がテーマではないため当初調査対象にしていなかったが、近年その実施が増えているため、以下の3事例に関しても調査を行うこととした。① 連邦レベルでのBuergerrat「民主主義」(2019年 )、② 連邦レベルでのBuergerrat「世界におけるドイツの役割」(2020から21年)、③ 連邦レベルのBuergerrat「気候」(2021年) 最新の事例である「気候」に関するBuergerratは、無作為で選ばれた参加者160人、12回の会議、55時間の議論を経て80の提案が抽出された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまでのインターネット調査をふまえて、PZの代表的な6事例の調査のために現地に赴き、行政や市議会、PZに参加した市民等関係者のインタビューを行うと共にPZ実施後の現地の状況を調査し、PZの波及効果を検証する。また可能であれば、連邦レベルのBuergerratに関して、その意義や効果を連邦議会担当者および実施機関にインタビューをする。 さらに、ドイツにおいてはPZを実施する代表的な機関は3つあり、当初はその3箇所を訪問する計画であったが、2020、2021年度はコロナ禍により訪独することができなかったため、1箇所のみオンラインインタビューを行った。相手は、ヴッペルタール大学民主主義と参加研究所所長のH.J.Liezmann教授で、PZを開発したP.C.Dienel教授の後任者である。彼は多くのPZを区画実施しているため、インターネットや文献調査では得られないPZの理論や哲学、現代政治との関わり、実務的なノウハウ、さらに彼が本年関わっているドイツ連邦議会のBuererrratに関しても、多くの知見を得ることができた。そこで2022年度は、PZの代表的な実施機関である市民鑑定研究所のSturm教授、および(有)ネクスス研究所所長のベルリン大学Dienel教授に対面インタビューを行う予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ蔓延のため、訪独することができなかった。そのため、海外出張旅費を次年度使用する予定である。
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