建築基準法の一団地認定制度は、住宅開発需要が大きな時代に活用された制度で、高度成長期の大規模団地整備に多大な役割を果たした。しかしながら、住宅の「供給」プロセスにおいては有効であった一方で、老朽化や性能劣化などによる「更新」プロセスの整備が必要とされる現在では、土地所有者・借地者全員合意という要件の厳しさがその妨げとなっている。本研究は一団地認定制度の変遷と認定事例の個別分析を通して、その課題と改善の方向性について検証した。 制度の変遷については、段階的に規定が追加されたが、既認定区域における計画変更や認定取消しに関する規定は制度創設から数十年経過してから整備されたため、現行基準に適合しない区域が多数存在すること、古い年代の認定は資料保存状況が十分でないことを指摘した。 また、認定事例の個別分析に関しては対象自治体として福岡市を選定し、確認申請過去台帳から一団地認定全477件(重複除外すると259件)のデータベースを構築した。その上で、「史的経緯」「地理的分布」「開発主体」「規模・用途」とともに、適用条項や緩和条項、複数回認定等による「認定内容の変化」を明らかにした。認定は住宅系用途が約9割であること、1970 年代以前に非住宅系用途は殆どないこと、1970 年代以前に10万㎡を超える大規模区域が集中していること、1980 年代以降は5 万㎡未満が増加したこと、1990 年代以降に住宅・商業一体開発事業が増加したこと、1999 年に連担建築物設計制度導入以降は中心市街地においてオフィスビル・商業・交通施設開発が増加したこと、容積率は年代を追うごとに高まる傾向があること、などを明らかにした。 当初は特定行政庁に認定の裁量の大部分があったため、区域内で更新する場合は現況をもとに一団地認定の状況を推測し、自治体等との協議の下で認識を共有することが極めて重要であることを指摘した。
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