東日本大震災の津波による被災者は、震災後短期間に複数の居住地移転を強いられ、仮設住宅、防集団地、災害公営住宅、自力再建住宅などの移転先をこれまで選択してきた。これらの移転先の選択時期や要因は世帯によって異なる。本研究では研究代表者らが継続的に復興支援や近所付き合いの変化等を調査してきた石巻市雄勝地区の被災世帯のうち、雄勝地区から近隣の大規模防集団地である二子団地へ移転した約200世帯に加え、河北地区と北上地区から移転した約150世帯を調査の対象とした。移転先選択のプロセスが新たな環境への適応状況にどう影響しているのか明らかにし、今後の防災集団移転計画のための有用な知見を得ることを目的とする。 2020年度はアンケート調査を実施(「家族・日常生活・会話相手や相談相手」、「親族や団地の方との交流・支え会い」、「二子団地への移転を選択した時期と理由の把握」)。2021年度は前年に引き続きアンケートを行った。アンケート調査により、現在の生活に関する内容(住民活動への参加状況、各住民の外出先、外出頻度、近所付き合いの内容と頻度、現在の生活に対する評価)、住宅再建に関する内容(移転理由、移転選択時期等)を把握した。2022年度は宮城県石巻市二子団地に移住する被災世帯を対象に、移転要因と現在の生活に対するヒアリング調査(16世帯)と、GPSロガーを住人に携帯してもらい、一週間の行動履歴を記録するGPS行動調査(13世帯)を実施した。 2023年度は石巻市職員へのヒアリングを行い、研究成果を「大規模防集団地における移転地選択時期と移転理由-東日本大震災による宮城県石巻市二子団地への移転を対象として」(中林諒、他、日本建築学会計画系論文集、第89巻第818号pp.655-661)にまとめた。
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