研究課題/領域番号 |
20K04860
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
八尾 廣 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50509750)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | モンゴル / 定住 / 住まい / 都市 / 住居改善 |
研究実績の概要 |
今年度は、社会主義時代のアパートの住戸調査を精力的に進め、公文書館における資料調査も継続し行った。実践面では、ゲル地区内に建設予定のコミュニティハウスの設計提案を行い、実現に向け歩みを進めた。他分野の研究者との共同研究を含む研究・実践活動についても継続し行っている。概要は以下7項目にまとめられる。 ①【モンゴル国立公文書館における資料調査】:社会主義時代の集合住宅の複数年代における実施設計図書や日本人抑留者により作成されたトレース図面、都市計画図面の詳細なスキャンデータを入手した。②【社会主義時代の集合住宅における住戸実態調査】:ハンオール区ほか3区にて社会主義時代のアパート10件、市場経済化後に建設されたアパート2件について住戸の実態調査を行った。③【ゲル地区の住居実態調査】:ソンギノハイルハン区においてゲル地区内住居の予備調査を行った。敷地活用の情報交換がSNSを通して活発に行われており、その傾向を顕著に示す事例を複数発見した。④【住居建設実践に関わる活動】:チンゲルテイ区にあるコミュニティ公園Green Lakeより設計を依頼された、SAKURA PEACE HOUSE(日本人抑留者記念館+地域の子どもたちのためのコミュニティハウス)の設計提案を行い、実現に向け歩みを進めた。⑤【鳥取大学乾燥地研究センター共同利用研究】:「古写真を用いた景観GISの構築」と題する共同研究を推進した。⑥【NPO法人GERにおける活動】:今年度はウランバートルにおいてモデル住居建設の共同プロジェクトが実現した。建築・都市計画分野の専門家、モンゴル人技術者らと住居改善に関する活発な情報交換を継続している。⑦【情報発信】第12回国際モンゴル学者会議(2023年8月9日-14日)において、社会主義時代にの集合住宅の設計図書に関する情報及び、住戸調査に基づいた居住実態に関する研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度社会主義体制下で建設されたアパートに加え、比較対象としての市場経済化後に建設されたアパートの住戸についての実態調査(実測調査及び住まい方に関するヒアリング調査)を精力的に進めることができた。また、公文書館での資料調査においても、過去入手していない年代の詳細な設計図書を入手し、日本人抑留者によるトレース図面の所蔵状況についてもほぼ全体像を把握できた。また、遊牧文明発祥の地アルハンガイ県において突厥、匈奴時代の都市遺跡や現役遊牧民の住まいを訪問し、モンゴルにおける居住文化や都市に関する知見を深めることができた。実践面ではNPO法人GERにおける住宅建設共同プロジェクトが実現し、住居改善に関する技術的な知見を得た。さらに、チンゲルテイ区にあるコミュニティ公園Green Lakeより設計を依頼された、SAKURA PEACE HOUSE(日本人抑留者記念館+地域の子どもたちのためのコミュニティハウス)の設計提案を行い、実現に向け歩みを大きく進めることができた。情報発信の実装についてはやや遅れており、上記の活動をホームページ等を最終的には作成予定であるが、一方で第12回国際モンゴル学者会議において、社会主義時代にの集合住宅の設計図書に関する情報及び、住戸調査に基づいた居住実態に関する研究発表を行うなど、本研究に関する情報発信を一部行うことができた。以上の経緯により、Covid-19により一時支障を生じていた本研究も、実践の形については当初予定からの変化は生じているものの、研究・実践の両面において軌道に乗りつつあると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで継続的に行ってきたゲル地区および社会主義体制下に建設された集合住宅の住居調査および資料収集については、ほぼ全貌を把握できる段階まで到達できた。次年度はこれらについてさらに補足的な調査を行う予定である。また、公文書館での資料調査については、今年度までの調査結果を踏まえ、モンゴル国立公文書館に所蔵されている資料の全貌がおおよそ把握できるまでに至ったが、一部不明な点、疑問点等もあるため、補足調査を継続し行う。ゲル地区の住居及び住環境改善に関する実践的研究については、昨年度は研究者所属のNPO法人GERにおける共同プロジェクトにおいてモデル住宅を実現したことで、モンゴルの住居建設における技術的な問題点等を把握し情報収集を行うことができた。さらに、ゲル地区のコミュニティー環境改善の活動家より依頼された、コミュニティー公園Green Lakeに建設するコミュニティーハウス(日本人抑留者記念館+子どもたちのコミュニティーハウス)の設計提案を行ったが、敷地条件等の変更により再設計を行うなど、建設に向け粘り強く歩みを進めることで、住居改善についての技術的知見も蓄積する予定である。本研究で得られた、近現代モンゴルにおける定住形の住まいに関する研究成果、実践的な設計・現地建設のプロセスで得られた技術的知見については、最終的に学術論文、日本およびモンゴルにおける学会やシンポジウムでの発表、現地の方にも容易に閲覧可能なウェブページ等で情報発信を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響により2年間、モンゴル国における現地調査を行えなかったため、研究期間を延長申請し翌年度も継続し現地調査を行うこととなった。翌年度は主たる現地調査費を大学経費・研究室の個人予算にて支出するが、一部資料購入等も生ずるため、次年度使用額から支出する予定である。
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