研究課題/領域番号 |
20K04861
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
是永 美樹 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (30345384)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 住まい / 開く / 高齢者 / 子ども / 福祉的活動 / 開く領域 / アクセス |
研究実績の概要 |
2021年度は、子どもの居場所として自宅を開放している15事例を訪問し、間取り調査とヒアリング調査を行った。開催プログラムは、絵本の読み聞かせ、家庭文庫、親子遊び、学習支援、子ども食堂などであり、開始時期は子ども食堂はすべて2016年以降であるが、そのほかの事例では20年以上も前から子どもの居場所として自宅を開放している事例も見られた。運営者は女性が7割で、そのほかは夫婦、男性であり、職歴では元教員、元保育士、元児童指導員などの子どもに係る既往歴のある運営者が6事例であった。 開いている部屋はプログラム内容によらず、接道側で利用者がアクセスしやすい位置であること、上足で床座の事例がほとんどであり、床座とすることで人数の変化に対応できること、上足であればリラックスして過ごせることなどがヒアリングからうかがうことができた。2020年度に調査を行った高齢者の居場所の事例では、予定された(指定された)スペースで椅子に座って活動する事例が多かったが、子どもの場合は、活動を一部屋にとどめることは難しく、続き間を利用したり、1階全体を開くなど、高齢者居場所に比較して広いスペースを開いていることを把握した。なかでも子ども食堂の場合、ほかのプログラムに比べるとスタッフ、利用者が多い、食材置き場なども必要で、開いている面積の平均は約70㎡と広く、多くに事例ではワンフロア全体を開いている。キッチンについては、専用のキッチンのある事例はなく、家庭用のキッチンを利用しながら、仕込みのやり方や配膳スペースの確保などを工夫して運営していた。高齢者の居場所と子どもの居場所では、同じ地域福祉的な居場所でありながら、空間要件は大きく異なることを把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、京都市内で高齢者の居場所として開放している住宅を15事例、関西圏にある子どもの居場所として開放している住宅15事例について、それぞれ訪問調査を行い、運営者の特徴、参加者の特徴、プログラム別に住宅の開放の仕方について分析・考察を行った。本研究の計画段階で予定していた事例の訪問調査については、おおむね終了している。特に2021年度に行った子どもの居場所に関する調査では、高齢者の居場所と共通する開き方の特徴と、子どもならではの居場所の特性の違いを把握することができ、参加者に合わせた居場所づくりの重要性を指摘できる資料を収集することができた。なかでも子どもの居場所として開放している事例のなかで、子ども食堂としている事例では、食事だけでなく、食後の学習指導、宿題カフェ、大人も対象としたプログラムも開催している事例が多く、ボランティアも含め、地域活動の拠点となっているケースが特徴的であった。 また、2020年度は新型コロナウィルスの影響で訪問調査ができなかったため、新建築社「住宅特集」に掲載された約100事例を対象に資料調査を行った。この調査では、本研究の申請段階で対象としていた福祉的な活動にとどまらず、様々なプログラムで住まいの一部を家族以外に開いている住宅も調査対象とし、あえて家族以外に開くことを前提条件として建築家が計画した事例を対象とすることで、高齢者や子どもの居場所の住宅の住まい方にはみられない開き方や接道側のアプローチ空間の特徴などを把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は、これまでに調査した事例について、住宅の開き方について共通する特徴と、運営者や家族構成、プログラムや参加者の違いによる特徴を整理する予定である。 高齢者や子どもを対象とした福祉的なプログラムで開放している事例は、すでに居住している住宅の一部をそれほど大きく改変することなく開放しているのに対し、建築家の設計した事例調査では、あらかじめ開くことを想定して積極的に開放するような間取りや外構が計画されている。新型コロナウィルスの影響で訪問調査が制限されたため、本研究の申請時には計画していていなかった建築家の設計した住宅の事例調査ではあるが、高齢者や子どもを対象とした開き方と異なる住宅計画の特徴を見出すことができたため、これらの結果も併せて考察することで、福祉的な居場所としての住宅計画の要点について、より相対的に整理する予定である。 また、これまでの訪問調査のヒアリングから、福祉的な居場所は参加者だけでなく、活動を支えるボランティアスタッフや支援活動の場を求めている地域住民にとっても、自身の社会貢献を実現する場として地域の中で位置づけられているという点は、今後の地域福祉的な居場所づくりに対して、重要な示唆を含んでいる。その中でも2021年度の子どもの居場所になっている事例の中でも子ども食堂として自宅を開放している事例について補足調査を行い、子どもの居場所から地域活動の拠点としての発展性についても考察したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウィルスの影響で、夏以前は訪問調査を行うことができなかったこと、また2021年度夏以降は、関西圏に絞って少人数で訪問調査を行うことはできたが、遠方の事例調査や3名以上での訪問調査などが行いにくく、予定していた出張費の支出がかなり少なかった。 これまでは主に関西圏を中心に訪問調査を行ってきたが、2022年度は最終年度であり、すでにこれまでに調査した事例を参照しながら、関西圏以外でも福祉的な居場所となっている事例を訪問調査し、これまでに得られた結果と共通する点やこれまでには見られなかった開き方などを調査し、これまでの調査結果と併せて総合的に考察する予定である。
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