本研究は、地球規模ないし都市レベルの気候変動にともない懸念される極端な気候現象として、短時間の集中豪雨に着目し、これに適応する都市計画の策定に資するものとして豪雨発生場所の地理的特徴とその統計的な特性を考察するものである。具体的には、1kmメッシュという詳細な空間解像度で集中豪雨の発生をとらえ、その現象の統計的特性を極値統計の手法で明らかにしたうえで、将来の集中豪雨の発生頻度や発生場所を予測した。 今年度は、前年度から引き続き、土地利用と、将来的な大雨の発生頻度およびその強度の関係について分析をすすめた。対象地は日本の首都圏、近畿圏、中部圏の三大都市圏とし、各圏の中心地区から100km圏の各1kmメッシュと設定した。期間は2003年から2018年とし、毎年の8月の時間雨量を、アメダスの解析雨量をもとに3次メッシュ単位で抽出した。具体的には、まず各年の対象地域のメッシュごとに時間雨量の推移とその地理的特徴の関係について、DID地区と非DID地区に分けて特徴を抽出した。次に極値統計モデリングの手法により、メッシュごとの確率モデルのパラメータを最尤推定法により推定し、そのうえで50年確率の降雨強度を算出した。これらの結果について、GISを用いて地図上で可視化するとともに、顕著な降雨が予想される地区を推定した。そのうえで、DID地区と非DID地区における傾向の違いを統計的に検証することにより、都市化の集中豪雨の発生に対する影響について検証をした。その結果、DID地区の各メッシュの50年確率の時間雨量は、非DID地区のメッシュと比較して多い傾向がみられた。このことは都市化が豪雨発生の要因となっている可能性を示すとともに、将来の局所的大雨による都市型水害の増加の可能性も示している。このことから、これに対応する都市計画として、緑地などの透水面の増加の重要性が示唆される。
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