研究課題
景観まちづくりの根幹をなす「景観計画」を持たない自治体は未だ多いことから、すでに景観計画を策定し運用している政令市及び中核市を対象として、景観計画を実施するときの景観誘導手法の運用実態の全国的傾向と課題、都市の景観形成に与える効果を明らかにすることを目的とする。政令市17団体、中核市46団体、計63団体を対象として、アンケートとヒアリングを実施した。①まず、Web検索によって各自治体の景観計画の目次から運用に関する項目を抽出し、自治体ごとの景観計画の運用実態を把握した。②次に、政令指定都市と中核市に対してEmailによるアンケートを行った。③さらに、福岡市等の政令指定都市に対するヒアリングを遠隔及び対面により実施し、運用手法に関する質疑応答を行い、以下を明らかにした。(1) 事前相談・協議の実施を「任意」と回答した自治体でも「義務化したいがあくまで条例の枠組みでしかない」と考える自治体と「義務化する必要性がない」と考えている自治体に分かれる。自治体と民間企業との間で定性的基準に関する認識のずれが63団体中44団体(67%)で生じている。(2) 事業者に景観アドバイザーを派遣する制度や、相談窓口を設けているが、多くの自治体では、これらの制度が必ずしも効果的に実施されるとはいえない。景観アドバイザー会議で誘導する手法は、多くの自治体で効果がみられるが、コストや工期の事情から、案件によっては景観アドバイザー会議の結果が反映されていない。(3) 事前協議の期日を明確に設けている団体は、25団体(32%)で、53団体(68%)は明確な期日を設けていない。(4) 企業が景観形成に取り組みやすくするために、景観の理念・意義の企業への周知、景観特性、景観目標像の明確化、事前協議の2段階制度の3点を示した。
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Proceedings of 13th International Symposium on City Planning and Environmental Management in Asian Countries, Chengdu
巻: 2023 ページ: pp.331-336
巻: 2023 ページ: pp.85-90