研究課題/領域番号 |
20K04879
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐々木 宏幸 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (10512501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タクティカル・アーバニズム / 飯田市 / プログレッシブ・アーバニズム / 裏界線 / 中心市街地活性課 / 空き家・空き店舗の活用 / まちづくり / イベント |
研究実績の概要 |
本研究では、長期的ビジョンに基づく恒久的改善へと段階的かつ連鎖的に発展する漸進的アーバニズムの実践手法を「プログレッシブ・アーバニズム」(以下PU)と定義し、長野県飯田市中心市街地「丘の上」における市街地活性化や拠点ネットワークの形成などの実践活動、および実践と連係する学術研究を、産学官民連携・都市間連携を通して遂行し、PU手法の理論化や地方都市の中心市街地再生におけるPUの有効性や課題の検証を行うことを目的としている。 令和2年度においては、これまで行ってきたPUや飯田市での実践・研究活動の成果や得られた知見のまとめ、および、次年度以降の飯田市でのPUの実践・研究活動に必要な基盤形成、のふたつを主に行った。 実践・研究の成果や知見のまとめに関しては、2編の研究としてまとめ発表した。ひとつは、飯田市と渋谷区穏田地区における都市間連携イベント実施の成果を基に検証した、PUの初動的実践手法としてのイベントの可能性と課題に関する技術報告、もう一つは、本研究で着目する飯田市固有の空間資源である細街路「裏界線」に焦点を当て、ヒアリング・実地調査などを基に探求した裏界線の活用可能性に関する論文、である。 一方、次年度以降の実践・研究活動のための基盤形成に関しては、飯田市商業・市街地活性課や丘の上に位置する橋北地区まちづくり委員会などと連携し、現地での実践・研究活動を円滑に進めるためのサテライト研究室として、また、地域や都市間の交流拠点として整備を進める具体的建物の活用に関する議論と調整を行い、拠点整備の方向性を共有した。また、地区における空き家・空き店舗の活用の方向性やPUの展開などに関しても議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行に当たり、新型コロナウイルス感染症蔓延による飯田市における活動機会の喪失は想定外であった。令和2年度には、6回程度の現地での数日間にわたる研究・実践活動を予定していたが、現地での研究・実践活動は一切実施することができなかった。代わりに、飯田市の担当者や地域のまちづくり関係者と数回のオンライン会議を実施し、意見交換や調整を行ったが、コロナ禍は、研究の遂行に少なからぬ影響を与えたと言える。 一方、コロナ禍での活動制限を受けて、令和2年度は、これまでの実践・研究成果のまとめと次年度以降の実践・研究活動推進の基盤構築に多くの時間を費やしたため、研究課題の遂行は全体としておおむんw順調に進展していると言える。 [研究実績の概要]で記載した技術報告、論文のまとめと飯田市での活動のための拠点構築の準備は、学術研究プロセスとPUの実践において、当初令和2年度を目処に想定していた成果であり、本研究課題は、令和2年度には、コロナ禍にもかかわらず、ほぼ当初の予定通りの進捗を果たせたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究課題の進捗に影響を与えたコロナ禍はいまだ予断を許さぬ状況が続いており、今後の研究の推進にも少なからぬ影響を与えると考えられる。特に飯田市での実践に主眼を置く本研究にとっては、現地での調査や実践活動は研究推進に不可欠である。一方、令和2年度のコロナ禍での経験やオンラインでの活動経験を踏まえ、研究課題遂行におけるオンライン活用に関する一定の知識を獲得することができた。今後の活動においては、コロナの状況を踏まえつつ、実地とオンラインでの活動を並行して進め、当初の計画通りに研究を遂行してゆきたいと考えている。 現地での活動においては、令和2年度に調整を進め基盤を構築したサテライト研究室兼地域の交流拠点の整備、拠点整備効果の周辺公園などへの波及、橋北地区における空き家・空き店舗の現状調査や活用方法の検討、地域住民やまちづくり関係者との調整、橋北地区におけるPU実践としてのイベントの開催などを順次進めてゆく予定である。特にサテライト研究室兼地域の交流拠点の整備においては、インターネット環境の整備を最優先で進め、オンラインでの地域との協働を可能とする環境整備を早急に行い、オンラインを活用した研究の遂行も進めてゆく。 また、都市間連携のパートナーである渋谷区においても、これまで同様、宮益坂や原宿神宮前地区においてPUの実践・研究活動を進め、飯田市における活動と連携させるとともに、そこで得られた知見を飯田市での実践・研究に反映してゆくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はコロナ禍の影響を受け、研究対象である飯田市での活動を一切行うことができなかった。そのため、当初予定していた交通費等が発生せず、それらを今年度以降に持ち越すことになった。 今年度もいまだコロナ禍の影響を受け、現地での活動は未だ行えていない。現在は、市や町づくり委員会とのリモートでの打ち合わせを行うなどして、今後の活動計画を詰めている。現地での活動が再開可能になり次第、現地での研究実施を行う予定である。
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