研究課題/領域番号 |
20K04880
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
服部 敦 中部大学, 工学部, 教授 (10460536)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 地域計画 / 沖縄 / 象設計集団 / 計画マネジメント / 計画遺産 |
研究実績の概要 |
本研究は、沖縄県の本土復帰直後に策定された一連の地域計画について、40年以上を経た現在の状況に照らした検証を行うものである。具体的には、恩納村、今帰仁村、名護市、石川市、沖縄市において象設計集団の関与により策定された地域計画を対象とし、①これらに通底する計画意図の探求、②計画された建造物・空間・仕組みの実現状況の整理、③計画が地域に与えた影響の分析を行うことにより、地域計画に基づく資産の保存・活用の取り組みの喚起、地域計画を空間として実現するために必要な計画のあり方の明確化、今後の地域計画マネジメントのあり方への示唆の獲得を目的とするものである。 2020年度には、対象となる地域計画の原本の写しを入手するとともに、当時の事情を知る関係者の消息・所在を把握し、関係者へのヒアリング、現地での都市空間・建造物の調査、関連資料の収集・整理を行った。具体的には、①恩納村1計画、今帰仁村3計画、名護市4計画の原本を確認し、電子データ化した上で比較検討を行うとともに、②関係者の一部(計画策定に携わった自治体担当者、コンサルタント、当時の背景を知る学識経験者等)へのインタビューを実施し、③名護市、今帰仁村、石川市で現地調査を行うことができた。 地域計画に通底する計画意図として、一次産業・地場産業の活性化、自然・エコロジーを重視した集落構造の保全、積み上げ型の住民参加等を重視する姿勢を抽出するとともに、地域計画に基づき実現された建造物・空間が現存し、計画意図を継承していること、沖縄北部の地域計画のムーブメントが中部の自治体の取り組みに波及したことなどについて、可能性を示す証左を得ることができた。 引き続き、計画原本の確保、関係者へのインタビュー、現地調査・記録を実施して、計画思想の明確化を図るとともに、計画に基づく都市空間や建造物の状況、計画が地域に与えた影響について情報の蓄積を図る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象となる計画原本については、当初予定していた5市村13計画のうち、3市村8計画について電子データ化することができたが、石川市、沖縄市の4計画については、所在確認、電子データ化が未了であり、引き続き、調査を継続する必要がある。 関係者のインタビューとしては、①象設計集団と当時協働していた都市計画コンサルタント、②象設計集団と親交があり、当時の地域計画策定関係者の動向に詳しい学識経験者、③今帰仁村の当時の計画担当者、④内発的発展論の観点から名護市の地域計画を研究対象とする研究者に対して実施することができた。恩納村、名護市については、当時の関係者へのインタビューが未了であり、石川市、沖縄市については、対象者の把握が進んでいないことから、引き続き、対象者の把握、インタビューの実施を行う必要がある。さらに、象設計集団の当時の担当者に対しても、インタビューを行うことを検討する必要がある。 地域計画に基づく実現例として、名護市役所、21世紀の森公園、今帰仁村中央公民館、白浜原公園について概覧するための調査を実施することができた。今後は、地域計画の比較検討を詳細に行った上で、あらためて、詳細な現地の調査、記録が必要である。また、波照間島、伊豆大島、仙台市などの関連するプロジェクトについても、可能な限り、情報収集、現地調査を実施する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
沖縄市、石川市の対象計画については、現地の研究協力者を通じて、引き続き、原本の所在の確認、電子データ化を行う。 関係者のインタビューについては、2020年度の関係者インタビューの中で把握することができた関係者について、順次、インタビューを実施する予定である。名護市の当時の関係者、沖縄県内の内発的発展論の研究者、波及先の自治体の関係者などを予定している。また、象設計集団の当時の担当者の所在の確認を行い、インタビュー実施に向けた準備を進める。 現地調査については、沖縄県内の象設計集団が関与した建築作品の現状の把握と記録を行うとともに、関連するプロジェクトについての調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては使用予定の1200,000円のうち、310,604円の次年度使用額が生じた。これは、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、研究代表者による現地調査の機会が制限されて予定の旅費に残額が出たこと、研究協力者による現地調査の機会が制限されて予定の謝金に残額が出たことが理由である。 2021年度においても、新型コロナウィルスの影響は予断を許さないが、感染状況を注視しつつ、可能な機会に集中的な調査が可能となるように、周到な準備を行い、助成金を活用して、計画原本の電子データ化、関係者へのインタビュー、関連プロジェクトに関する現地調査・記録を実施する計画である。
|