研究課題/領域番号 |
20K04882
|
研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
橋本 彼路子 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (60583523)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 斜面市街地 / 高齢者 / 障がい者 / 生活支援 |
研究実績の概要 |
斜面市街地における高齢者・障がい者等の総合的住環境を調査し、継続的居住実現の支援とシステムについて検証するために予定していた調査は、2019年末からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による災難や危機的状況から、高齢者や障がい者施設に実際に赴いての視察やヒアリング調査は大変困難な状況となり、調査の順番などを熟考して進める必要があった。2020年においては感染予防の観点から、主としてアンケート調査と電話によるヒアリング調査を行うこととした。調査は、斜面地に存在する団地、特に高齢者や障がい者の居住比率が高い公営住宅を対象にし、具体的には長崎総合科学大学の近くにある比較的大規模な公営住宅である日見地区長崎市営住宅団地で実施した。長崎市は我が国の代表的な斜面市街地であるが、日見地区も敷地全体が斜面地にあり、現状の団地の課題や住民から必要とされている住環境への要望を知り、より良い市営住宅を造ることを目標に、物理的なバリアフリーのみだけではなく、人的サービスの行い易い工夫、自然災害の避難や被災後の生活のサポートなどを含めた住環境全体を検討することを目的としたアンケート調査票を作成した。アンケートは647戸に配布した結果、278(43.0%)の高い回答率となり、住民の住環境課題に対する意識の高さを示す結果となった。ヒアリング調査は、市営住宅を管理している行政官、住宅団地の自治会長と管理人に行っただけでなく、アンケート調査で協力を申し出た特徴ある高齢者の2家族(ELVのある住戸に住む1家族、車いす使用者の1家族)に、十分な新型コロナウイルス感染の予防対策を行い、彼らの住戸を視察し平面図を作成しヒアリング調査を実施することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日見地区の市営住宅団地に住む全居住者を対象にしたアンケート調査は高い回収率となり、フリーアンサーの部分も熱心に書き込んだ内容も多く、十分な調査結果を得られたことから、典型的な斜面地の団地に住む居住者の住環境の実態の概要を把握できた。さらに、ヒアリング調査を行ったことによって、来年度の調査で対象とする層の把握や調査目的や内容もより正確に設定することができた。アンケート調査の結果により、「介護認定を受けた人・家族」は全体の14.4%、「障がい手帳の交付を受けた人・家族」は全体の19.4%であった。住民の居住年数は平均23.1年と長く、住民の年齢は60歳以上の高齢者が528人中284人(54.2%)と半数以上であることが明らかになった。その内訳をみると70歳代は29%、60歳代は19%であるのに対し、80歳代は6%である。日見地区の市営住宅は全44棟の内、エレベーターのある棟は1棟のみで、エレベーターのない住棟に80歳以上の方は継続的に居住することが難しくなっていることが推察された。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施したアンケート調査で今後の協力を可と回答いただいた家族、特に介護認定を受けた本人や家族、障がい手帳の交付を受けた本人や家族を中心に、より詳細な心身状況・日常生活の様子や困難・生活支援のサービスの状況を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がある程度収まるまでは電話によるヒアリン調査を続ける。そして、感染症の流行がある程度収まった時点で、訪問を許可してくださった住居の平面図などを作成し、居住環境の実態を詳細に把握する予定である、さらに感染症の対策が進展すれば、デイケアや入浴サービスなど生活支援を行う施設にも訪問し、スタッフのヒアリング調査などから、居宅における地域生活支援生活サポートの実態や斜面地における工夫について、また行政に求める支援なども調査をする。こうした調査や分析によって、斜面市街地における高齢者・障がい者等の総合的住環境の把握を行い、継続的居住実現の支援とシステムについて検証をすすめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
248円と少額なので、文具など購入する予定
|