研究課題/領域番号 |
20K04883
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飛ケ谷 潤一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30502744)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 16世紀 / イベリア半島 / ルネサンス / 建築装飾 |
研究実績の概要 |
令和2年度は新型コロナウィルスの流行により、当初予定していたスペインでの現地調査が先送りになったため、研究作業に関しては必然的に文献調査のみに限定された。しかしながらスペイン語の文献に関しては、インターネットや国内の大学図書館などからの入手には限界があり、また申請者も多くの知識があるわけではないので、今まで取り組んできたイタリアとスペインとの関係をさらに深く研究する方針へと変更せざるを得なかった。それゆえ、その研究成果物についても、イタリア・ルネサンスの建築書がスペインその他の諸外国へと及ぼした影響に関するものとなった。 まず【雑誌論文】からみていくと、現在採用が決定され今年6月に刊行予定の『地中海学研究』の論文が挙げられる。この論文では、ヨーロッパ諸国に大きな影響を及ぼしたセバスティアーノ・セルリオの建築書には相反する概念がしばしば登場するため、彼がそれらをどのように調整したのかという問題を設定し、最終的には建築家の優れた「判断力」に委ねられる点について論じた。 次に【図書】としては、『世界の夢のルネサンス建築』が挙げられ、この中の第7章で南イタリアとイベリア半島のルネサンス建築が取り上げられている。装飾に着目すると、スペインの建築には中世から過剰な装飾の伝統が受け継がれているようにも思われるが、イタリア・ルネサンスの影響はむしろ装飾を抑制する傾向にあったことが示されている。 最後に挙げる【学会発表】は、住宅建築の正面階段に着目したものである。イタリア15世紀の建築には有名な階段の例がないわけではないが、16世紀のブラマンテの建築には優れた階段の例が多く、それらはセルリオの建築書を通じてヨーロッパ諸国に大きな影響を与えたことが明らかにされている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で説明したように、令和2年度は新型コロナウィルスの流行により、当初予定していたスペインでの現地調査が先送りになったため、研究の進捗状況については予定よりも遅れている。国内での作業が可能な文献調査についても、入手できる文献が限定されるため、研究課題に直結した作業を進めることが難しく、研究対象範囲の縮小や変更を余儀なくされている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の状況では、今年度も昨年度と同様に当初の計画に沿った作業を進めることは難しそうである。それでも、もし状況がよくなるのであれば、16世紀のマドリードとその周辺の建築について現地調査を行う予定である。しかし、状況が変わらないのであれば、昨年度と同様にイタリアとの関係に重点を置く方針を選ばざるを得ない。その場合は、主にスペイン王カルロス1世とフェリペ2世の時代の建築について、セルリオやヴィニョーラの建築書からの影響をていねいに分析する作業を進める計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の研究費の大半は旅費として使用される予定であったが、新型コロナウィルスの影響により、海外調査はもとより、国内での学会や研究打ち合わせなどもすべてオンラインで実施されたため、旅費を図書購入費に充てた。 また、洋書の場合は注文してから到着するまでに時間がかかるため、未だ到着していない書籍分を残額として、次年度に繰り越すことになった。
|