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2021 年度 実施状況報告書

和釘から洋釘への転換の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K04889
研究機関長岡造形大学

研究代表者

平山 育男  長岡造形大学, 造形学部, 教授 (50208857)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード洋釘 / 和釘 / Nail-rod / Wire-rod / 輸入 / 輸出 / 再輸出
研究実績の概要

今年度は我が国の近代における鉄釘の輸入と輸出の検討を行った。
従来、洋釘の輸入は明治10(1877)年頃、明治5(1872)年頃とする説が流布されていたが、研究では、少なくとも明治4(1871)年には洋釘の輸入のなされたことを、『横浜毎日新聞』の記事から明らかとした。更に洋釘類としては、Nail-rod=釘棹が、元治元(1864)年から輸入されたことを示した。Nail-rodは本来、西洋においては洋釘を造るための材料であったが、我が国では輸入したNail-rodにより和釘の生産がおこなわれたものの、これは厳密には洋鉄和釘と呼ぶべきものであった。輸入されたNail-rodは鉄材として広く流通し、素材としての和鉄の価格を押し下げ、その結果、明治時代初期には和釘の価格も低下した。その結果として、広く普及した洋鉄和釘は、使用が忌避された洋釘とともに、明治10(1877)年代後半を中心とした時期に併用が可能な価格であったと言える。
一方、我が国における釘類の輸出は、少なくとも明治時代中期から見ることができた。記録の残る明治15(1882)年の貿易統計においては、九州を中心とする港から東アジアの国々に、実は和釘の輸出が行われていたことを確認した。数量は多いものではなかったものの、前述した洋鉄和釘が諸国へ送り出されたのであろう。併せて洋釘の再輸出、洋鉄和釘の材料となるNail-rodの再輸出も確認することができた。我が国で洋釘=丸釘の生産が始まったのは明治30(1897)年で、洋釘の輸出は少なくとも大正3(1914)年から確認できる。輸出量が増進したのは洋釘の原料であるWire rod の生産が国内で確立された昭和7(1932)年以後であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近代における釘類の輸入、輸出及び再輸出については、概ね全容を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で近世の和釘が、洋釘類の輸入開始に伴い、比較的広汎な洋鉄和釘の生産及び流通があり、これを受けた和釘と洋釘の併用期をへて、全面的に安価な洋釘の普及となった実態を把握した。今後は、この安価な洋釘が、明治時代中期以後における我が国の木造建築にどのような影響を及ぼしたのか検討する。
そのため、今後は、近代における洋釘の価格および消費量の実態を把握した上で、木造構法が地震被害などを教訓として、鉄金物を使うに至ったのかを考察する。

次年度使用額が生じた理由

予定通りの金額である。
来年度は研究のまとめを行う予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 戦前期における鉄釘の再輸出国・輸出国と再輸出品・輸出品について2022

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 792 ページ: 423-431

    • DOI

      10.3130/aija.87.423

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 戦前期における釘類の輸出について2022

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 791 ページ: 140-149

    • DOI

      10.3130/aija.87.140

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『大日本外国貿易年表』『外国貿易概覧』などに見る釘鉄と鉄釘の輸入について2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 790 ページ: 2711-2719

    • DOI

      10.3130/aija.86.2711

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『大日本外国貿易年表』『外国貿易概覧』を中心にみる戦前期の我が国における鉄釘の輸入国と荷揚港2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 786 ページ: 2180-2188

    • DOI

      10.3130/aija.86.2180

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 17世紀後半以後における和釘の呼称長と実寸法について2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 783 ページ: 1540-1549

    • DOI

      10.3130/aija.86.1540

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] THE JAPAN WEEKLY MAIL.紙を通してみた明治時代におけるWire Nailsの輸入と価格の変遷2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 782 ページ: 1295-1303

    • DOI

      10.3130/aija.86.1295

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 明治17(1884)年における「官鉄」の価格について 和歌山県橋本市中心市街地における町と町家の研究 その1762021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会大会学術講演会
  • [学会発表] 安田善三郎『釘』における「原料輸入の製釘」の時期2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会北陸支部大会
  • [学会発表] 横浜森岡商店明治2(1869)年『浜品万覚帳』における釘地鉄の価格の検証2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会北陸支部大会
  • [学会発表] 明治13(1880)年9 月1 日付『朝野新聞』に掲載された釘商の集会と釘の呼称について2021

    • 著者名/発表者名
      平山 育男
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会北陸支部大会

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公開日: 2022-12-28  

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