近世建築生産史の研究は蓄積が多く成果も多岐に渡るが、これまであまり顧みられることのなかった東北地方を対象に、「大工棟梁」による建築生産活動の内容と特質を明らかにさせることが本研究の目的である。福島県を範囲として選定し、大工棟梁の氏名などが記載される棟札を中心に史料を悉皆的に収集し、大工棟梁が生産活動に従事した事実を明らかにさせる。その上で、中世から近世へと移り行く中で、先進的な技術を備えた大工と平民に混じって生活する無名の番匠が地域の造営を担い、他所から移入された技術が蓄積され大工や番匠の技術は向上し、最終的には両者の差異は限りなく縮まり接近したところで近世を迎えるに至る過程を明らかにさせた。
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