研究課題/領域番号 |
20K04901
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
守田 正志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90532820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドーム / ドーム移行部 / アナトリア / 中世 / イスラーム |
研究実績の概要 |
本調査研究は、複数の三角形平面を組み合わせた折板構造による独特なドーム移行部を主対象に、中世アナトリアにおけるドーム移行部の歴史的展開とそれを可能せしめた建築技術の継承過程の解明を目的とする。併せて、アナトリア周辺地域のキリスト教やイスラーム文化圏の建築との横断的な比較により、研究成果を中世アナトリア地域固有の現象として評価するだけでなく、同時代やそれ以前に展開した多様な建築の歴史の中への位置づけを試みる。 本研究課題の初年度に当たる2020年度は、写真測量用PC・ソフトウェアの整備および、検討対象のドームを有す中世創建の建築物が多数現存するトルコ中央部での第1回現地調査を実施を予定していた。しかし、コロナウィルスの影響により本研究の根幹をなす現地調査による対象建築物のドーム移行部の精緻な情報の収集に関しては、2020年度は断念せざるを得なかった。一方、写真測量用PC・ソフトウェアの整備は早い段階で実施し、ソフトウェアの操作の習熟に努めた。 現地調査を実施しえなかったことから、2020年度の予定を2021年度以降に順次繰り越し、最終年度に補助事業期間延長承認申請を行うことを念頭に、研究計画の再調整を行った。具体的には、これまでに収集したデータを再整理し、2021年度以降の現地調査地域・対象の見直しや入念な下調べを行い、作業効率の向上を図った。 また、年度末には武庫川女子大学トルコ文化研究センター主催の定期的に開催されている研究会に招聘され、これまでのアナトリアにおけるドーム架構の研究成果および今後の展望について発表し、出席した研究者の方々と有益な議論を交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究を進める上で、現地調査で得られる対象遺構の正確な建築的情報は必要不可欠である。しかし、研究実績の概要で述べたように、2020年度は現地調査を実施できず、文献から得られる断片的なデータの整理に留まった。
以上から、現在までの達成度としては「遅れている」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度に実施できなかったトルコ中央部での調査および当初予定のトルコ西部での調査の、計2回を実施する。その際、調査に調査補助員を同行させて作業の効率化を図るなどの対応を考える。昨年度に整備した写真測量用PC・ソフトウェアを用い、新たに収集したデータからドーム移行部の3次元データを作成・分析を進める。 また、本年度も現地調査を実施できない場合を想定し、文献資料の積極的な収集に努める。文献資料のみでは制約はあるが、限定的ながら中世創建のモスク建築に用いられた三角形平面を用いたドーム移行部をその形態的特徴から類型化し、類型ごとに使用された年代・地域的特徴について分析する。併せて、これまでの研究成果である墓廟建築のドーム移行部の系譜と対照させることで、中世アナトリアにおけるドーム移行部の系譜図の検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に整備予定の写真測量用PCおよびソフトウェア経費は予定通り施行した。一方で、2020年度はトルコ共和国での現地調査を1回計画していたが、コロナウイルスの影響で調査を中止したため、当初予定した旅費を全額未執行とし、その分を次年度の調査旅費として計上した。 2021年度は当初から2回分の現地調査旅費を計上しているため、進捗状況の遅れを取り戻すべく、場合によっては本年度未使用分の経費は調査補助員の旅費として使用する予定である。
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