研究課題/領域番号 |
20K04901
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
守田 正志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90532820)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ドーム / ドーム移行部 / アナトリア / 中世 / イスラーム |
研究実績の概要 |
本調査研究は、複数の三角形平面を組み合わせた折板構造による独特なドーム移行部を主対象に、中世アナトリアにおけるドーム移行部の歴史的展開とそれを可能せしめた建築技術の継承過程の解明を目的とする。併せて、アナトリア周辺地域のキリスト教やイスラーム文化圏の建築との横断的な比較により、研究成果を中世アナトリア地域固有の現象として評価するだけでなく、同時代やそれ以前に展開した多様な建築の歴史の中への位置づけを試みる。 本研究課題の3年目に当たる2022年度は、渡航の条件が緩和され、現地調査を実施することができた。調査内容は、以下の通りである。 ●2022年11月16日~12月3日にかけ、トルコ共和国西部に位置するエディルネ、イズニク、ブルサ、イスタンブルに残る、約50棟の中世末期から近世初期創建のモスクを中心とするイスラーム建築の現地調査を実施した。ブルサやイズニクでは三角形平面を用いたドーム移行部の多様化が顕われ始めることは既往でも指摘されており、2022年度の調査において悉皆的なデータ収集に努めた。また、エディルネやイスタンブルは、三角形平面を用いたドーム移行部の使用が徐々に減り、ペンデンティブが主流となっていくという指摘に留意し、調査対象遺構を厳選した。 ●調査では、写真撮影・平面実測を中心に、当該地域における遺構の状況を把握するとともに、内部架構の詳細を確認した。また、一部の遺構においてはビデオ撮影による動画記録も実施した。得られたデータを基に、予定通りドーム移行部の形態的特徴の分析を着実に進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を進める上で、現地調査で得られる対象遺構の正確な建築的情報は必要不可欠である。しかし、2020年度、2021年度は現地調査を実施できず、文献から得られる断片的なデータの整理に留まった。遅れを取り戻すべく、渡航制限が緩和された2022年度秋に、調査補助員を帯同させ、トルコ西部での建築調査を実施した。調査補助員の協力のもと、短期間の滞在で効率的にデータを収集し得たものの、旅費(特に、燃料サーチャージ)の高騰のため、2回目の調査の実施には至らなかった。 以上から、現在までの達成度としては「やや遅れている」と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、現地調査として主に中世末期から近世初期創建のモスク建築に適用された三角形平面を用いたドーム移行部のデータを収集し、分析を進めた。一方、中世初期から中期創建のモスク建築に関しては、文献資料を中心とした限定的な分析にとどまった。 そこで2023年度は、2022年度に実施できなかったトルコ中央部を対象地域に、中世初期から中期創建のモスク建築を主対象に調査を実施する予定である。その際、調査に調査補助員を同行させて作業の効率化を図るなどの対応を考える。昨年度に整備した写真測量用PC・ソフトウェアを用い、新たに収集したデータからドーム移行部の3次元データを作成・分析を進める。 得られたデータから、ドーム移行部の形態的特徴を類型化し、類型ごとに使用された年代・地域的特徴について分析する。併せて、これまでの研究成果である墓廟建築のドーム移行部の系譜と対照させることで、中世アナトリアにおけるドーム移行部の系譜図の検討を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度・2021年度のコロナウィルスの影響による現地調査中止ため、漸次、残額を繰り越している。2022年度は当初から2回分の現地調査旅費を計上していたが、調査補助員を帯同した調査を1回実施した。そのため、2020年度・2021年度の繰越金の使用までには至らなかったことが、大きな要因である。 2023年度は、当初は単独での1回の調査の予定していたが、これまでの繰越金の使用により、調査補助員を増やした現地調査1回または2回実施し、データの更なる拡充に努める。また、2024年度への課題期間延長も視野に入れ、計画的に使用していく予定である。
|