研究課題/領域番号 |
20K04906
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安藤 徹哉 琉球大学, 工学部, 教授 (60222783)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アフガニスタン / ヘラート / ヘルムンド / 伝統住宅 / 文化遺産 / 歴史的市街地 |
研究実績の概要 |
アフガニスタンにおけるターリバンによる政変以降、現地調査や住民集会に制約がかかるようになった。このため、当初、計画していた住民ワークショップは中止せざるを得なかった。そうした制約下において、アフガニスタンにおいて現地調査を遂行し、その成果を下記の三篇の英文の研究論文として日本建築学会計画系論文集に投稿し、発表した。 このうち、論文1はアフガニスタン西部ファラー地域に位置するラフタン村の家屋の建築的特徴と集落構成について検討するものである。最初に衛星画像からベースマップを作成し、それを基に総合的な現地調査を行った。ケーススタディとして、集落内で最も古い3 軒の家屋(130 年、 120 年、110 年)の実測と聞き取りを行った。現地調査の結果、ラフタン村の集落構成は気候、地形、村内のコミュニティグループと強く関連 していることが明らかになった。ドーム状ヴォールト屋根については、一重と二重の二種類が見られた。この二重のドーム状ヴォールト屋根の民家は、これまで研究対象とされたことがなく、世界的に見ても貴重な資料となった。 また、論文2と論文3については昨年度も報告しているが、文化遺産としてのヘラート旧市街地の重要性を示す研究成果として重要である。今年度は新たに、ヘラート旧市街地の都市壁から採取した試料の放射性炭素年代測定を行い、その建設年代の同定を行っている。その結果は、海外の論文誌へ投稿する予定である。この研究成果もまた、世界初のものである。これらの研究成果は、今後のヘラート旧市街地の保全・復元のための計画を策定するために必要な基礎資料となる。また将来的には、これらの研究成果を地元研究者や住民に開示し、ヘラート旧市街地の保全計画、ひいては復元計画の策定へと結びつけていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アフガニスタンにおけるターリバンによる政変以降、住民の集会をともなうまちづくり活動は許可されなくなった。このため、当初、計画していた住民ワークショップは中止せざるを得なかった。しかし、地元の研究者たちとは現在も連絡を取り合っており、何らかの形で研究成果を伝えたいと考えている。こうした状況のため区分を「やや遅れている」としたが、住民ワークショップ以外の研究計画は順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
住民ワークショップによるまちづくり計画案の策定については、ひとまず延期して時期を見ることにする。しかし、タリバン政権下でも遂行可能なヘラート旧市街地の保全計画、ひいては復元計画の策定のための文化遺産に関する資料作りは継続する。その一環として次年度は、下記の3テーマについての調査・研究を行う。 1.放射性炭素年代測定法を用いたヘラート旧市街地の都市壁の建設年代の同定 2.ヘラート旧市街地の公共空間の変遷 3.ヘルムンド地域の伝統的な住宅と集落の現地調査
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年からの世界的な新型コロナウイルス感染症の流行と2021年のアフガニスタンにおけるターリバンによる政変により、ヘラートにおける調査活動を自由に行うことができなくなった。このため、最終年度を一年延期し、それに伴い次年度執行額が発生した。 使用計画は次の通りである。1.ヘラート旧市街地とヘラート近郊都市プシャンの都市壁の試料採取と年代測定 2.ヘルムンド地域の伝統住宅の現地調査 3.データ入力作業のための雇い上げ
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