研究課題/領域番号 |
20K04913
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
佐藤 圭一 福山大学, 工学部, 教授 (60435378)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 備後表 / 中継織り / 畳 / 藺草 / 地域遺産 / 備後表継承会 / トレーサビリティ実証実験 / 備後三蔵動力中継織機 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、消滅危機にある希少な備後藺草を露地において栽培実践することを研究方法の1つとする。協力農家と共に、2019年7月に福山市本郷町と熊野町の藺草圃場で前年11月に植えた藺草の刈り取りを行った。また、2020年11月には福山市本郷町で藺草の植え付けを行った。本研究着手前を含め、協力農家との藺草栽培の協働は、2020年の植え付けで5シーズン目である。藺草栽培は研究期間中継続し、備後表生産プロセスに直接参入する。 本研究に取り組むにあたり、2017年に備後表の保全と継承のための6つの論点をあげた。その1つが、「3. 品質管理システム(トレーサビリティ)の構築」である。国宝修理等にも指定され、最高級と謳われながら絶滅危機の備後表の継承には、統計に表れないミクロな実態把握がまず必要である。そのためには、藺草栽培から畳表生産・流通、建築設計・施工という藺草が建築化される全プロセスに関する実践研究が必要不可欠となる。業界の商習慣もあり、国宝や重要文化財の畳工事においてさえも、藺草の栽培地や栽培者、製織者の情報が表に出ることはほとんどない。 2019年7月に刈り取った藺草を原料として、2019年9月と2020年10~11月に、「備後藺草による備後表」のトレーサビリティ実証実験を2回行った。本研究において新たに提示した「証紙」を製織時に畳表に織り込み、製畳時に畳に縫い込むものである。本実験の証紙には、織機名(畳表銘柄)、栽培地、製織者、製畳者(畳床材料、縁材料)、施工物件、原草地、収穫年、選別等級、経糸種別、製織・加工日、織機固有記号・製造番号、検査者が記載されて、裏面に検査者(備後表継承会)の角印が押印されている。 これらの製織作業は、2019年に再生した「備後三蔵動力中継織機」を用いて、研究代表者主宰の備後地域遺産研究会のメンバーが職人の指導を受けながら実施したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、日本各地に残る他の藺草産地との比較調査を研究方法の1つとしているが、コロナ禍の社会情勢により、遠隔地における臨地調査が全く行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当面は備後地域における調査研究を先行させることで、研究を進捗させる。遠隔地の調査研究は資料調査を中心に進め、社会情勢をみて、比較臨地調査に着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の社会情勢で、遠隔地調査における旅費を全く使用することができなかった。また同様に、主に学生による調査・図版作成補助を計画していたが、これに関する謝金も使用することができなかった。社会情勢を見極めながら、これらの費目についても次年度分とあわせ計画的に使用する。
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