研究課題/領域番号 |
20K04916
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 光司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70376507)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / テスラターボマシン / マイクロ流体機械 / 境界層 / 流体工学 |
研究実績の概要 |
今年度は,これまでに行ってきた気体を対象としたテスラターボマシンの設計から得られた知見をベースとして,液体を対象にしたテスラターボマシンの設計において,どのような相違点があるのかを明らかにすることを目的とした解析を実施した. まず,ロータ部分の解析を行ったところ,ロータの入口出口部分に直接境界条件を与えたことによって誤差が大きくなることが判明したことから,バッファ領域の設置などによって,解析の精度を改善した. 次に,従来の設計において用いてきた無次元設計パラメタの一つであるEkman数について,考察を進めた.その結果,Ekman数を同じ値にした場合でも,回転軸方向流速の影響,乱流遷移の現れ方,Ekman境界層の助走区間の影響が,気体と液体では異なることが示唆され,それらの影響を加味したうえで,液体用テスラターボマシンの設計を行う必要があることが示された.具体的には,Ekman数をそろえた場合でもディスク間隔とロータ角速度の影響が現れることが示された.これは特に,密度が大きく異なる気体と液体では,その影響の差が無視できず,設計においてそれらの影響を考慮する必要があることを意味している. 次に,次年度に設計試作を予定している試験装置の設計に関する考察を行った.上記の解析結果及び実験装置の諸条件(大きさ,流量など)を鑑みると,ロータ直径は従来と同じく80㎜にしたうえで,ディスク間隔とロータ回転数を作動流体である水に合わせて変更し,駆動モータのトルクと作動流体の流量に応じてディスク枚数を決定する,というアプローチが適切であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来,層流状態を確保したうえでEkman数をそろえれば,同等の効率のロータが実現できると考えていたが,そこで用いられていた仮定や近似の影響が気体と液体では異なることが,今年度のCFD解析結果と考察から示唆された.最適な設計を得るためには,それらの影響を明らかにする必要があることから,そのためのCFD解析を実施した.現在,そのCFD解析を引き続き実施しつつ,試験装置の具体的な設計検討を始めている状況であり,概ね計画通りであると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べたように,CFD解析を進めつつ,その結果に基づいて装置本体の設計を行う.またそれと並行して,液体用ターボマシン試験を行うための周辺環境づくりも進める.装置本体の設計については,可能な限り現有の気体用テスラターボマシン試験装置の設計を流用することによって時間の短縮を図る一方で,これまで申請者の経験が少ない,液体用ターボマシン試験特有の項目(閉ループ構造の構築やリーク対策など)については,予備試験実施も含め,十分に時間をかけて検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた講演会がオンライン開催となり,参加登録費が減額され旅費を支払う必要が無くなったため,当初計画と差が生じた.これによる差額については,次年度における消耗品の支払に充てる予定である.
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