本年度は前年度に引き続いて,液体用テスラポンプ試験装置の準備及びこれを用いた実験を行った.まず,圧力,流量,トルク計測の準備を行い,装置全体の効率を算出できるようにした.これを用いて,回転数を777~4000rpmの範囲で変化させつつ実験を行ったところ,1)流量と揚程の関係は通常の遠心ポンプと類似している,2)装置の全体効率はいずれの流量係数においてもEkman数が1.1~1.2付近で最大となりロータ効率の解析解と同じ傾向である,という結果が得られた.また,流量係数に対する効率の変化を見たところ,流量係数が0.3~0.4程度のときに効率が最大となり,CFD解析の結果と定性的に同じ傾向を示すことが確認できた.なお,定性的な一致にとどまった理由としては,CFD解析ではロータとケーシングの隙間の流れ場を考慮していないことが理由の一つとして考えられた. 次に,本試験装置を用いてParticle Image Velocimetry(PIV)計測を実施した.計測にあたっては,特に高速度カメラの撮影フレームレートについての検討を重点的に行った.当初,一般的に推奨されている基準に基づいたフレームレートで計測を行ったが,撮影された粒子群の相関が得られにくく,また明らかに誤った値となるような場合もあることが分かった.試行錯誤の結果,一般的に推奨されている値よりも高いフレームレートで撮影することによって,適切と思われる流速計測ができることが分かった.これは,PIV計測の対象であるディフューザースクロール内部では強い旋回流が発生しているが,これに伴って,計測に用いているレーザーシート面に垂直方向の流速成分が小さくないためであると推察された. 以上の結果,本課題の主目的としていた液体用テスラポンプの作動特性が明らかになったとともに,ディフューザースクロール内部の速度場を明らかにすることができた.
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