近年,衛星の姿勢制御は精度のみならず,より高速な姿勢制御が求められている.本研究は小型衛星を対象に高速姿勢変更を実現するために,可変速コントロールモーメントジャイロ(VS-CMG)と呼ばれる制御装置の高効率利用方法の提案とその制御則に関する研究である.本研究では従来の機器では無駄となっていたトルクを有効に活用する方法を提案・検証し,特に有効であると考えられる超小型の姿勢制御装置の開発・実証実験を行った. 研究最終年度は制御則の検証と実際の実験を中心に実施した.制御則は計算高速化を実現するため,準最適制御則に利用される随伴変数の初期値群について見直しを行った.随伴変数は従来最適計算を実施するときに求められるものだが,設計した準最適制御則では事前計算を行った最適計算の結果の一部を初期値として利用する形式を取っている.本来すべての姿勢変更条件,すなわち,回転軸,回転角度に対して初期値群を用意する必要があるが,本年度の研究を通して,その数を著しく低減できることを発見した.また,初期値群に関する感度解析を実施し,軽量ながら高速かつ収束しやすい制御則の完成に至った.また,小型実験機に制御則を搭載し,姿勢変更実験を実施し,想定するトルクが充分に発揮できることを確認した.実験を通し,様々な知見を得ることが出来た.最終年度として国際学会発表1件,国内学会発表を2件実施し,また,1編の論文を投稿し,現在査読中である. 研究期間全体を通し,VS-CMGを搭載した衛星やその他衛星の姿勢変更に対し適用可能な準最適制御則の確立に至った.当該技術は他の最適制御問題にも適用可能であり,応用の機体ができる.また,小型衛星の実験を通し,当該制御則の有効性を確認することが出来た.
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