本研究では超小型人工衛星の開発・運用の更なる効率化のため,世界的に研究開発が遅れており不確定性が確認されている温度制御機能の改善を目指した.問題解決の手段として,不確実性を低減可能な機器設計手法の提案と温度制約を含んだ宇宙機運用計画系の構築の2つの手段を検討した.不確実性の主たる要因である①構成機器間の熱伝達条件などをはじめとした熱的パラメータの不確実性の影響についての評価,②不確定パラメータの推定手法の検討,③不確実性を受動的に低減可能な材料の評価,④パラメータ変動や熱制御材料を取り入れた運用計画系の検討を行い,⑤不確実性を受動的に低減可能な材料の実装方法に対し,より現実的な条件下での実験的検討を実施した. 具体的な項目としては,①に関しては,熱パラメータの不確実性に起因する温度変動について解析的な検討を行い,その解析に基づいた実験的検証を行った.②については,解析に基づいて設定した推定手法をもとに,実験的検証を行い妥当性の評価を行った.③については,相変化蓄熱材を中心とした解析および実験的評価を実施した.④については,実機運用データや各種実験データをベースに衛星システムシミュレータをくみあげ,数理最適化を用いた運用計画自律立案システムを構築した.本システムは複数の実衛星への適用が計画されている.⑤については,実機搭載用の温度安定化デバイスを設計・検証し,デモンストレーションを実施可能なデバイスを完成させた.2024年中に宇宙環境下での実験を実施する予定である.
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