研究課題/領域番号 |
20K04922
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
瀬川 大資 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00264804)
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研究分担者 |
片岡 秀文 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (10548241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液滴群燃焼 / 自発着火 / PM |
研究実績の概要 |
本研究では,噴霧燃焼における着火促進とPM低減のための指針を示すことを目的として,全体がほぼ球形となるように微細燃料粒子が等間隔で配置された燃料粒子群を実際に作成し,これを酸素を含む高温の雰囲気中に置いて,融解,蒸発,自発着火,液滴群燃焼させる実験を行っている.そして,光学観測により自発着火の遅れ時間と挙動,群燃焼の時間と挙動,および液滴群の内外に生成されるPMの挙動を,数値データ化している. 本年度も前半は感染症対策のため,実施者が協力して準備や実験を行うことはできなかったため,引き続き地上実験を行い,基礎データを増やした.また,自発着火についての簡易な数値解析を実施した.本年度の後半には,徐々に協力作業が行えるようになったことから,予定していた作業や実験を進めることができた. PM生成に注目した実験では,光源をCWレーザーに変更して,新たに透過光減衰法の光学系を構築した.4個の微細燃料粒子群を高温空気中で自発着火させ,透過光減衰法によりPMの生成量を評価した結果,粒子直径の6倍の粒子間隔でPM生成は極大となることが再確認された. 自発着火に注目した実験では,単一燃料粒子を比較的温度の低い高温空気中に保持して,燃料粒子近くに配置した熱電対で,温度変化を計測した.熱電対を微細なものに変更した結果,より早い時期に冷炎発生が確認されるようになった.ただし,冷炎温度に関しては,微細な熱電対でも,大幅な温度上昇は確認されなかった.数値解析では,大気圧下で二段着火が再現され,冷炎発生の可能性が示唆された. 微小重力実験の実施に向けては,実験装置本体や落下施設の整備を進め,複数回の練習実験を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PM生成に注目した実験では,4個の微細燃料粒子を,等間隔となるように正四面体の頂点に配置した燃料粒子群を用意して,高温空気中で自発着火させ,透過光減衰法によりPMの生成量を評価した.光源をCWレーザーに変更して,新たに構築した透過光減衰法の光学系を使用したが,これまでの結果と同様に,粒子直径の6倍の粒子間隔で,PM生成は極大となることが再確認された.ただし,観測された透過光像において,想定していなかった光量の変動が見られたことから,光学系の調整が課題として残された. 自発着火に注目した実験では,単一燃料粒子を比較的温度の低い高温空気中に保持して,燃料粒子近くに配置した熱電対で,温度変化を計測した.熱電対を微細なものに変更した結果,より早い時期に冷炎発生が確認されるようになった.ただし,冷炎発生時期が,雰囲気温度が高くなると早まり,熱炎発生よりも少し低い温度領域であまり変わらなくなるのは,これまでの結果と同様であった.一方,冷炎温度に関しては,微細な熱電対でも大幅な温度変化は見られなかった.熱炎発生までわずかな温度上昇があり,先行研究で示された,ほぼ一定な冷炎温度は確認されなかった.数値解析では,ヘプタンの反応モデルを利用し,無次元で温度の経時変化を計算した.その結果,大気圧下でも二段着火が見られ,冷炎発生の可能性が示唆された.一段目の着火で到達する温度は,初期の設定温度とともに高くなっており,実験結果と類似したものであった. 微小重力実験の実施に向けては,実験装置本体や落下施設の整備を進め,複数回の練習実験を行うことができた.次年度には,落下実験でのデータ取得を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
PM生成に注目した実験においては,今年度に構成し使用した光学系の調整を進めて,解析結果の再現性向上を図る.その上で,昨年度に実施したように,総体積を同程度として粒子数を1個,4個,または13個とした燃料粒子または微細燃料粒子群を用意して,高温空気中で自発着火させ,透過光減衰法によりPMの生成量を評価する.燃料粒子4個の場合には,等間隔となるように正四面体の頂点に配置し,13個の場合には,等間隔となるように六方最密充填構造に配置する.PMの空間分布や時間変化に関するデータを収集し,主に液滴数,液滴間隔と雰囲気温度の影響について,地上実験により数値データ化する. 自発着火に注目した実験においては,今年度に微細化した熱電対を使用して,冷炎の発生時期や冷炎温度に注目し,主に雰囲気温度の影響について,微小重力実験により数値データ化を進める.また,総体積が粒子1個の場合と同程度で,粒子数を4個とした微細燃料粒子群も用意して,冷炎の発生時期に及ぼす液滴間隔の影響などについて,地上実験により数値データ化を目指す.また,光学系の構築を進めて,分光器による冷炎検出を地上実験で目指す. そして,以上の実験結果より,燃料粒子群の冷炎発生,自発着火からPM生成までの過程に及ぼす粒子間隔や雰囲気温度の影響について,研究成果をとりまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も前半は感染症対策のため,実施者が協力して準備や実験を行うことはできなかったため,分光器を利用した冷炎発生の検出については,実施を先送りした.次年度の早い段階で光学系の構築を進め,光学部品の購入費用として支出する.
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