本研究では,燃料噴霧を模擬するものとして,全体がほぼ球形となるように微細燃料粒子が等間隔で配置された燃料粒子群を作成し,これを高温の空気中に置いて,融解,蒸発,自発着火,液滴群燃焼させる実験を行い,光学観測により自発着火の遅れ時間,燃焼時間,PM生成などについて検討した.一部の実験については,学内の落下施設を利用して微小重力下で行った. PM生成に注目した実験では,微細燃料粒子群(粒子数4)を高温空気中で自発着火させ,透過光減衰法によりPMを計測した,PM生成は,粒子直径の6倍程度の粒子間隔で極大となることが確認された.また,微細燃料粒子群(粒子数13)でも実験を行い,雰囲気温度が低下することでPMは減少することが確認された. 自発着火に注目した実験では,燃料粒子(粒子数1)または微細燃料粒子群を比較的温度の低い高温空気中に保持して,燃料粒子近くに配置した熱電対で,温度変化を計測した.燃料粒子では,微小重力下と通常重力下で冷炎発生と推測される温度上昇が確認された.その遅れ時間は,雰囲気温度の上昇とともに短くなり,微小重力下では半減した.ただし,高温条件下では遅れ時間がやや長くなる傾向が見られた.微細燃料粒子群(粒子数4)でも,燃料粒子の場合と同様に冷炎発生と推測される温度上昇が確認され,遅れ時間は燃料粒子の場合よりも短くなった.さらに,粒子間隔が小さくなると遅れ時間は短くなる傾向が見られた.高温条件下では,熱炎発生と推測される温度上昇が見られる場合があり,その発生時期は粒子間隔が小さい場合に早くなったが,熱炎発生には再現性がなかった.ただし,粒子間隔が最も小さい場合には,すべての場合に熱炎発生と推測される温度上昇が見られた.数値解析では,反応モデルを利用して無次元で温度の経時変化を計算し,大気圧下で二段着火が確認されたことから,大気圧下での冷炎発生の可能性が示唆された.
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