研究課題/領域番号 |
20K04937
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中村 一彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40402086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水中光無線通信 / 可視光レーザ / レーザアレイ |
研究実績の概要 |
本研究課題では,マルチギガビット級の水中光無線通信における伝送距離の延伸化を目的として,可視光レーザアレイに指向性制御機能を持たせた新しい送信機の実現とその実地試験による検証を行う.当該年度では,先行研究においてギガビット級水中伝送実験において使用実績のある波長520nmの緑色LDを2個用いて構成したレーザアレイ光送信機の検討を行った.変調方式には周波数利用効率の高い直交周波数分割多重(OFDM)方式を用いた.FPGA+高速DACと同波長の2個の緑色LDを用いて,単一の光受信機に向けて2本の同一光OFDM信号の無線伝送実験を行った.システム構成の簡易化のため2個の緑色LDには同じOFDM信号を入力して電気・光変換を行った.有効サブキャリア数64,ガードインターバル長8,周波数帯域約300MHz,16QAM-OFDM光信号伝送実験を行った結果,約1mではあるが,単一LDを用いた場合に比べて伝送速度1.006Gbit/sにおけるビット誤り率が約10^-4から約10^-6と2桁の改善が確認できた.当初,同一波長の2本の光信号間の干渉による悪影響を懸念していたが,受信信号には干渉によって生じるであろうビート信号は確認できず,またビット誤り率も改善できたことから,少なくとも2個のLDを用いたレーザアレイと帯域約300MHzのOFDM信号の組み合わせでは,光信号間干渉による性能劣化は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で予定していた,2光源のレーザアレイを用いたシステム構築と原理確認実験による動作確認及び有効性の確認まで達成できた.ただし,濁水中での伝送実験については次年度に検証することになってしまった.海水の濁度調整に用いる懸濁物質としてJIS規格にて水質調査に用いられるカオリンやホルマジン標準液による濁水中の光無線伝送実験を実施する.
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今後の研究の推進方策 |
2光源のレーザアレイを用いて構築した光送信機を用いて,まずは海水を模擬した濁水中での性能評価を行い,伝送距離,伝送速度,ビット誤り率等による有効性の検証を行う.またLD数を拡張したシステム構築を進め伝送距離延伸化の効果を確認する.LD数を増やした場合,光受信機への入射角度によって受信光電力が大きく劣化してしまうため,各LDには指向性が制御できるようキネマティックマウントを実装する.それら並行して,大型水槽,湖沼,河川,海洋での実験を行えるよう,実験装置を封入できる耐水・耐圧容器の設計・製作も行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目では新型コロナウイルスの影響で学会発表がおこなえず,それに関連する費用が次年度使用額に相当する.2年目の今年度は,1年目に予定していた研究成果発表に使用するとともに,濁水中での伝送実験を行うためのフィールドテストとしての外部の大型水槽,湖沼,河川,海で実験を行うための旅費,装置開発等に充当する予定である.
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