研究課題/領域番号 |
20K04940
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河原 伸幸 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (30314652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 燃焼 / 熱機関 / 分光計測 / 燃焼CFD / 服室式ガスエンジン |
研究実績の概要 |
二酸化炭素の排出削減の観点から,熱機関にはさらなる熱効率向上が求められている.燃焼室に主体となる主室とは別に副室を形成する副室式では希薄運転が可能と考えられる.副室内のガス燃料と空気の混合比がどのように希薄熱機関の着火安定性に影響を与えているのかが学術的問いである.副室内点火プラグ近傍燃料・空気混合気計測結果を基に圧縮膨張装置における副室燃焼ガスジェットの可視化および3次元CFDによるモデルの高度化および解析結果より,副室内混合気への着火特性および副室から噴出される燃焼ガスジェットの燃焼メカニズムの解明に取り組む. 2021年度は,(1)副室を有する圧縮膨張機関の構築,(2)圧縮膨張機関を用いた副室燃焼ガスジェットの可視化,(3)熱流体解析プログラムを用いた点火・燃焼モデルの高度化,を実施した. (1)2020年度に導入した熱流体解析プログラムにより,副室形状の検討を行った.副室形状を決定し,圧縮膨張機関のシリンダヘッド部に副室を設置した.副室には,気体燃料を噴射できるように燃料噴射弁と点火プラグを取り付けることができるように設計を行った. (2)副室を設置した圧縮膨張機関において,点火プラグにより副室内で点火・燃焼を行い,主室への燃焼ガスジェットを用いた燃焼実験を行った.噴孔径2.0mmの条件では,副室から火炎ジェットが噴出されるとともに主燃焼室内の混合気も着火・火炎伝播している様子を確認できた.2020年度に構築したSIBS点火プラグにより副室内の燃料濃度計測を実施した. (3)熱流体解析プログラムを用いて,副室付き圧縮膨張機関を対象に火炎伝播・火炎ジェットのLES解析を行った.噴孔径2.0mmのとき, OHの質量分率からジェットの先端部で着火する様子が確認でき,ジェットによる強い乱流の影響を受けて複雑なしわ形状となりながら火炎伝播する様子を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,(1)副室を有する圧縮膨張機関の構築,(2)圧縮膨張機関を用いた副室燃焼ガスジェットの可視化,(3)熱流体解析プログラムを用いた点火・燃焼モデルの高度化,を実施した. (1)2020年度に導入した熱流体解析プログラムにより,副室形状の検討を行った.パッシブ型副室燃焼システムにより,噴孔径が副室内流動に与える影響を評価した.副室形状を決定し,圧縮膨張機関のシリンダヘッド部に副室を設置した.副室には,気体燃料を噴射できるように燃料噴射弁と点火プラグを取り付けることができるように設計を行った. (2)副室を設置した圧縮膨張機関において,点火プラグにより副室内で点火・燃焼を行い,主室への燃焼ガスジェットを用いた燃焼実験を行った.延長ピストンに取り付けた石英窓から燃焼室内の可視化を行った.噴孔径1.0mmの条件では,変更した当量比・点火時期の全条件において副室内部の燃焼を確認できた一方で,主燃焼室の燃焼はごく一部の条件でしか見られなかった.噴孔径2.0mmの条件では,副室・主燃焼室の両方で燃焼が起こった.ボトムビューによる可視化より,副室から火炎ジェットが噴出されるとともに主燃焼室内の混合気も着火し,可視化範囲全体で火炎伝播している様子を確認できた.2020年度に構築したSIBS点火プラグにより副室内の燃料濃度計測を実施した. (3)熱流体解析プログラムを用いて,副室付き圧縮膨張機関を対象に火炎伝播・火炎ジェットのLES解析を行った.噴孔径1.0mmのとき,ノズル内で火炎が消炎することにより主室内の混合気は着火・燃焼せず,実験と同様の傾向を得られた.噴孔径2.0mmのとき,主室内での着火・火炎伝播が確認できた.OHの質量分率からジェットの先端部で着火する様子が確認でき,ジェットによる強い乱流の影響を受けて複雑なしわ形状となりながら火炎伝播する様子を確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降では,(1)圧縮膨張機関を用いた副室燃焼ガスジェットの可視化および副室内燃料濃度計測,(2)熱流体解析プログラムを用いた点火・燃焼モデルの高度化,を実施する. (1)副室を設置した圧縮膨張機関において,点火プラグにより副室内で点火・燃焼を行い,主室への燃焼ガスジェットを用いた燃焼実験を行う.圧縮膨張機関では,延長ピストンに取り付けた石英窓から燃焼室内の可視化を行うことができる.副室にSIBS点火プラグを設置し,点火プラグでの燃料濃度が副室からの拡散燃焼ジェットに与える影響を評価する.副室からの拡散燃焼ジェットの貫通距離,拡がり角などを評価する.また,副室内に燃料噴射を行うアクティブ燃焼方式により副室内の燃料濃度を変化させる.副室からの拡散燃焼ガスジェットによる希薄予混合気の着火・火炎伝播特性の評価を行う. (2)熱流体解析プログラムを用いて,副室内着火から副室からの拡散燃焼時ガスジェットおよび主室予混合気の着火・火炎伝播のモデル化を実施する.副室に設ける噴孔形状を変更し,副室内流動,副室内点火・火炎伝ぱ特性,主室に流出する副室からの拡散燃焼ガスジェット,主室燃焼特性に与える影響を調査する.また,副室内にガス噴射を行い,副室内燃料濃度分布・流動分布および副室内点火・火炎伝ぱ特性を調査する.主室内で中間生成物であるHCHOやOHなどの挙動を調査することで,燃料の素反応モデルを評価する.最終的に副室からの拡散燃焼ガスジェットの着火メカニズムを把握する.
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