二酸化炭素の排出削減の観点から,燃焼室に主体となる主室とは別に副室を形成する副室式では希薄運転が可能と考えられる.副室内のガス燃料と空気の混合比がどのように希薄熱機関の着火安定性に影響を与えているのかが学術的問いである.副室内点火プラグ近傍燃料・空気混合気計測結果を基に圧縮膨張装置における副室燃焼ガスジェットの可視化および3次元CFDによるモデルの高度化および解析結果より,副室内混合気への着火特性および副室から噴出される燃焼ガスジェットの燃焼メカニズムの解明に取り組んだ. 2022年度は,(1)圧縮膨張機関を用いた副室燃焼ガスジェットの可視化,(2)熱流体解析プログラムを用いた点火・燃焼モデルの高度化,を実施した. (1)副室を設置した圧縮膨張機関において,点火プラグにより副室内で点火・燃焼を行い,主室への燃焼ガスジェットを用いた燃焼実験を行った.パッシブ式副室内においてSIBS計測を行い,燃料由来の水素原子発光をとらえることができたため,燃料が十分に流入していることが分かった.当量比ごとに燃焼ガスジェットの可視化を行った.理論空燃比時に燃焼ガスジェットの噴出時期が最も早く,燃焼開始時期が早いことが分かった. (2)熱流体解析プログラムを用いて,副室付き圧縮膨張機関を対象に火炎伝播・燃焼ガスジェットのLES解析を行った.LESと詳細化学反応機構を組み合わせた計算手法により,中間生成物を含む化学種から火炎構造の解析を行うことができた.副室内の火炎伝播により,副室から主室へ,未燃ジェット,既燃ジェットの順に流出し,未燃ジェットによって主室内で温度,燃料質量の増加が見られた.その後,主室内において,副室より流出した高温の未燃ジェットによってCH2Oが生成され,既燃ジェットの流出によりOHが生成される様子から,主室内の混合気が着火に至る過程を捉えることができた.
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