研究課題/領域番号 |
20K04941
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金丸 崇 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90612127)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロペラ-舵干渉 / 省エネ舵 / ESD / プロペラ後流 / 舵推力 / 舵抗力 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、船舶の推進性能向上対策として、舵に注目し、プロペラ後流中の舵に発生する舵推力を効率的に得るための独創的な新形式舵の研究に取り組んでいる。本研究の初年度は、高効率のメカニズムの考え方がこれまでとは異なる新形式舵を提案し、研究代表者が所属する研究室所有の高速回流水槽を用いて水槽模型実験を行った。 提案した舵は、プロペラ中心軸の延長線上に位置する舵の断面上に平板を設けるものであり、平板付舵と呼ぶことにする。プロペラ後流中の舵は、プロペラが作り出す旋回流により、迎角を有することと等価となり、揚力を発生し、この揚力の前後方向成分が舵推力として作用する。しかし、一方で、舵の上部と下部は迎角の向きが逆となるため、循環は逆方向であり、また翼幅方向において循環分布は連続であることから、プロペラ中心軸延長線上は、迎角が大きくても循環がゼロに近いため、揚力は発生していないと推測される。これは、翼端で揚力が減少する原理と類似している。そこで、研究代表者は、翼端版(平板)を翼中央部に配置し、翼上部、翼下部、それぞれでこの平板が翼端板として作用し、翼中央部近くまで、鏡像効果による揚力、すなわち舵推力を発生させる舵を提案、設計した。 通常舵、反動舵の2種類の舵をベースとし、それぞれに3種類の平板を取り付けた計6つの平板付舵について、水槽模型実験を行った。その結果、反動舵については、平板がひねりの効果を低減させるため、逆効果となり、平板を有さない舵の方が効率がよかったが、通常舵については、平板を付けることにより、平板の摩擦抵抗が付加されるにもかかわらず、プロペラと舵を一体の推進器とみなしたプロペラ-舵系の効率で向上することが分かった。また、平板がプロペラ推力を増加させる効果があることも実験により分かり、さらなる性能向上の可能性も見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、研究代表者が既に提案した省エネ舵をベースとして、その改良と理論的メカニズムの解明に取り組むものであったが、早い段階でCFDやパネル法による計算結果、過去の実験結果によるメカニズムの調査を行い、大幅な効率向上を得ることが難しいと判断した。また、これらの調査から新たなアイディアが生まれ、平板付舵という着想に至った。 この舵は理論的なシミュレーションが難しく、理論的な研究は次年度の課題となるが、メカニズムの推測に基づく省エネ舵を設計し、水槽模型実験まで実施し、成果を得ている。先に実験から実施することによって、改良の方針も固まったことから、次年度の目標、計画も明確となった。理論的研究が後回しになったとは言え、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の水槽模型実験により、平板付舵の改良方法について知見が得られた。今後も引き続き、改良を行った平板付舵について水槽模型試験を実施する。一方で、平板付舵について、理論的シミュレーションモデルの構築、CFDによる計算も行い、理論と実験の両面から平板付舵の高効率のメカニズムの解明、および更なる高効率を目指して改良を行う。 また、次年度は国内、国外の講演会やシンポジウム、および論文にて、本研究による新形式舵とその効果について発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、計算機を2台購入した。一方、当該年度は水槽模型実験を実施したが、これまでの研究で使用してきた舵を基準舵とし、付加する平板、および取り付けについては研究代表者が所属する研究室で実施したため、模型製作費がほとんどかからなかった。水槽模型試験は次年度も引き続き実施する計画であり、更なる改良を施した省エネ舵を設計し、模型を製作する。次年度使用額は、翌年度分と合わせ、模型製作費として使用する。また、理論的研究も実施する計画であり、グラフィック等のソフトウェアや計算機の備品等にも充てる計画である。
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