研究代表者は,船舶の推進性能を向上させる方法として,プロペラと舵の干渉に着目し,プロペラ後流中の舵に発生する舵推力を効率的に得るための,新しい舵の研究に取り組んでいる。令和3年度は,フィン付舵について,独創的な新形状である,楕円フィンを提案し,理論計算,CFDによる数値シミュレーション,および水槽模型実験から,従来型フィンよりも大きな舵推力が得られること示した。 最終年度である令和4年度は,令和3年度に構築したシミュレーションツールを用いてフィン形状の改良を行い,また,舵抗力のみならず,プロペラの推力とトルクも計測し,プロペラと舵を一体と見なしたプロペラ-舵系効率の評価を行った。更には,翼幅方向の舵抗力分布を考える上で,理論的にも実験的にも不明であったプロペラハブ直後方の部分的な舵抗力を調査するため,分割舵を用いた,前例のない,独創的な実験を計画し実施した。 楕円フィンについて,フィンの翼幅は固定し,翼面積(短径),取付角度による系統模型を製作し,実験を行った。また,形状による性能を調べるため,同じアスペクト比を有する矩形フィンについても製作,実験を行った。なお,フィン模型はフィンとフィンが付く舵の一部を一体として製作し,3Dプリンタを用いて製作した。舵抗力については,フィンを大きくすると抗力が増える一方で,プロペラ-舵系効率では,微小ながらも性能向上が見られ,舵フィンの効果として自身が推力を発生するのみならず,排除伴流によりプロペラ推力を増加させる効果も大きいことが分かった。 また,分割舵模型実験については舵を上中下の3分割でそれぞれの舵抗力を計測し,プロペラのハブ渦を被る,舵中央部では局所的に大きな舵推力が発生していることを実験により明らかにした。 本研究の成果は,既に国内外で3件発表しているが,令和4年度の成果についても日本船舶海洋工学会等で発表する予定である。
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