研究実績の概要 |
第1に、研究代表者らが過去に提案した模型船の操縦運動を実船と相似にする自由航走試験法(Ueno et al, 2017, Suzuki et al., 2019)を活用した模型試験を実施することで、模型と実船における波浪中操縦運動の違いを定量的に明らかにした。具体的には、波浪中を保針航行時には、平水中抵抗に釣り合うためのプロペラ推力の現象と、舵効きの低下により、(1)実船の方が波による船速低下が大きくなる、(2)斜航角や針路保持に必要な当舵がてんぱ長域で増加する、ことを明らかにした。 従来の実船の操縦性能を把握するため方法としての、実船実験や数値計算における欠点(実施の困難さや推定精度)を克服した手法として、模型試験で直接それを明らかにしたことは大変意義がある。 第2に、模型試験によって、斜航による規則波中の定常波力の直進時からの変化を明らかにした。これまでに公表されてきた定常波力の計測は、そのほとんどが停止時や直進時であるものが多かった。これに対して、本試験結果は実海域を(斜航しながら)航行する船により近い状態で働く定常波力を示すものであるため、重要性がある。
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