研究課題/領域番号 |
20K04953
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
益田 晶子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (10322679)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブラックカーボン / 舶用機関 / 排ガス分析 |
研究実績の概要 |
ディーゼル機関排ガス中のブラックカーボン(BC)の光吸収に影響を与える因子のひとつとして、BC自体の炭素構造がある。これまで、ディーゼル機関排ガス中のBCを捕集し、走査電子顕微鏡(SEM)で観測したところ、燃料油の種類やエンジン運転負荷率に依存して構造が変わることが明らかになった。硫黄分の異なる重油、低硫黄燃料油(硫黄分<0.50%、VLSFO)、超低硫黄燃料油(燃料油中硫黄分<0.10%、ULSFO)を用いて4-ストロークの中速エンジンを運転し、BC排出量を比較した。その結果、エンジン負荷率の高い条件では、燃料油によるBC排出量の差はほとんどなかったが、低負荷率ではVLSFOがULSFOよりもBC排出量が多いことが明らかになった。一般にアロマ分が多いとBC排出量が多いとされているため、燃料油の組成分析を行ったところ、芳香族分、レジン分、アスファルテン分といった、いわゆるアロマ分の比率は、VLSFOが約25%、ULSFOが約30%だった。つまり、アロマ分のみではVLSFOのBC排出量の増加を説明することができないことがわかった。そこで、元素分析でH/C比を比較したところ、VLSFOの方が低く、これは、アロマ分以外に不飽和炭化水素が多いことを示している。BCの排出に影響する燃料中の成分を特定するため、ガスクロマトグラフィー/質量分析装置を用いて、燃料中の炭化水素成分の分析を行った。その結果、VLSFOはULSFOより、より長い直鎖飽和炭化水素を含んでいるほか、多環芳香族炭化水素について、より高次に縮合した成分の含有量も多いことがわかった。このような燃料油中の炭化水素構造の違いがBC排出量および炭素構造に反映されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
業務過多のため、計画どおりの研究が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1年間、研究期間を延長し、燃料の動粘度、密度といった物性を抑えたうえで燃焼試験を行い、BCの排出量、粒径、構造との関係を明らかにする。また燃料油や潤滑油由来の有機炭化水素やサルフェートによってBCが被覆されると、光吸収が増大することが知られている。PM 捕集と成分分析を行い、有機炭化水素量、サルフェート量が異なるときに、計測原理の異なる分析法で計測値が異なるか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
業務過多のため、装置製作が行えなかったため。
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備考 |
https://www.nmri.go.jp/about/information/outside.html 所属機関の外部評価委員会報告書として、R4年度の研究成果についての報告書が掲載予定(準備中)
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