研究課題/領域番号 |
20K04961
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
阪口 龍彦 近畿大学, 工学部, 准教授 (00403303)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 巡回経路問題 / 長方形詰込み問題 / 異環境適応型遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
近年,インターネットショッピングの拡大,感染症に係る巣ごもり需要拡大による物流量の増大が著しい.国内物流の9割を占めるトラック輸送における輸送効率化は喫緊の課題となっている.特にラストワンマイル輸送と呼ばれる最終拠点からエンドユーザーへの輸送においては,道路交通事情や消費者の要望等,様々な条件下で配送計画を立てる必要がある.本研究では,車両への荷物の積み込み,荷物の顧客への巡回輸送をターゲットに,多目的最適化を可能とする共進化型ハイブリッドメタ解法の開発を試みる. 本研究で解決すべき問題は,(1)トラックに積載する荷物の配置の最適化,および(2)荷物を顧客に配達あるいは引取りする際の巡回経路の最適化,の2つである.ただし,客先では必ず荷物の積み下ろしが生じるため,これら2つの最適化問題には関連性があり,これを考慮しなければ高効率輸送が実現できない. 今年度は,トラックの荷台を2次元平面と考え,大きさの異なる矩形の荷物を,必要な荷台数が最小となるよう詰め込む長方形詰込み問題としてモデル化するとともに,荷台入り口付近から順次配送していく巡回路を生成することで,荷物の配置と巡回経路を同時に考慮できるよう配送計画問題をモデル化した.さらに,荷物の配置と巡回経路を同時に決定するために,先行研究で開発した異環境適応型遺伝的アルゴリズムを拡張した.提案手法の有効性を検証するために,地図上でランダムに抽出した86か所の地点を顧客とし,各顧客が1つの配送需要を持つ配送計画問題について,提案手法を用いて数値実験を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トラックに積載する荷物の配置の最適化と,荷物を顧客に配達あるいは引取りする際の巡回経路の最適化を,多目的環境下で同時に行うために,当初計画では先行研究で開発した共進化遺伝的アルゴリズムを適用する予定であった.しかし,対象問題をモデル化する過程において,荷物の配置と巡回経路を表す遺伝子表現を共通化できると判断し,同じく先行研究で開発した異環境適応型遺伝的アルゴリズムの方が親和性が高いと判断し,手法を切り替えた.遺伝子表現を共通化したことで,解の探索領域を限定することができ,求解速度は向上するものの,良質なパレート解集合を得ることがやや困難となった.また,現実的条件を考慮した評価関数についても,文献での調査が主体となり,思うように進んでいない.以上より,進捗状況はやや遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
トラックへの荷物の積み付けは簡単のため2次元平面と考えていたが,これを3次元に拡張する.2次元平面の場合は順次荷物を取り出せるとしていたが,3次元の場合,上部に他の荷物がある場合に取り出しに時間がかかるため,これを評価するための評価関数を設計する.また,共通する遺伝子表現のほかに,荷物配置と巡回経路の遺伝子を別々に用意した拡張型の異環境適応型遺伝的アルゴリズムを構築する.さらに,求解効率向上のため,セービング法等の最適化手法と組み合わせるハイブリッド化を行う.これにより小売店数1,000以上の極めて大規模かつ現実レベルの問題に対して,実用時間内で有効な解を得ることを目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大の影響で調査旅費が不要となったこと,研究進捗が当初計画よりやや遅れたため,当初予定していた国内外での学会発表を行えなかったことが主たる原因である.さらに,提案手法の実装に注力したため,数値実験における比較対象となる数理最適化ソルバの導入が遅れた.今後,未購入の最適化ソルバを導入するとともに,旅費は次年度も支出がほとんどないと見込まれるため,書籍の購入やシミュレーションソフトの導入等を検討する.
|