研究課題/領域番号 |
20K04972
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
増川 純一 成城大学, 経済学部, 教授 (30199690)
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研究分担者 |
黒田 耕嗣 日本大学, 文理学部, 教授 (50153416) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金融時系列 / 極値分布 / フレッシェ分布 |
研究実績の概要 |
間欠性は時系列中の大きな変動の生起に関する確率的性質であり、保険や金融市場においてのリスク評価にとって重要な情報と考えられるが、間欠性をどのように記述すべきかということは、複数のアプローチがあり明らかではない。本研究では、金融資産価格の時系列を間欠性の観点から実証分析を行うことにより、確率過程モデルが備えるべき要件を明らかにする。また、申請者らがすでに構築したマルチフラクタル・ランダムウォークモデルと極値理論とを融合することにより、以下のことを目的とした研究を行う。 1. 大変動の確率分布の漸近挙動、その生起に関する待ち時間分布などの間欠性の観点から、金融資産価格の時系列が持つ統計的性質を明らかにする。 2. Pickands が行なった、最大値過程の漸近挙動を調べるアプローチを、マルチフラクタル性を備えた確率過程(マルチフラクタル・ランダムウォーク)に対して適応し、間欠性に関する複数のアプローチの関係を明らかにする。 3. 間欠性が金融資産保有のリスクに及ぼす影響を明らかにする。 この目的のために、本年度は極値理論の視点から金融資産価格時系列の大変動の確率分布の挙動を分析するために、東京証券取引所への上場銘柄の株価時系列を用いた実証研究を行なった。株式市場の異なる局面である2004年、2005年、2008年の高流動株では極値分布の漸近分布であるフレッシェ分布が予測する最大損失と近しい関係が得られたが、低位流動株に関してはフレッシェ分布を上回る結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、極値理論の視点から金融資産価格時系列の大変動の確率分布の挙動を分析するために、東京証券取引所への上場銘柄の株価時系列を用いた実証研究を行なった。 本年度は極値理論の視点から金融資産価格時系列の大変動の確率分布の挙動を分析するために、東京証券取引所への上場銘柄の株価時系列を用いた実証研究を行ない、高流動株では極値分布の漸近分布と近しい結果を得ることができた。 一方、もう一つの視点からのアプローチであるPickands の最大値過程に関しては、分析のためのプログラムを作成中であり、実証研究や金融資産価格時系列の確率過程モデルであるマルチフラクタル・ランダムウォークモデルの理論的研究から何らかの結論を得るに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Pickands の最大値過程の視点からの実証研究、理論的研究を引き続き行いたい。そのための具体的な研究は以下の通りである。 1)株価時系列からPickands の最大値過程を抽出する。具体的には、価格変動の閾値を定め変動がそれを超える時刻を記録していく。閾値を変えながらこれを行い。最大値の確率分布、待ち時間分布の漸近的挙動を実証的に明らかにする。 2) 金融資産価格時系列の確率過程モデルであるマルチフラクタル・ランダムウォークモデルの最大値過程について、最大値の確率分布、待ち時間分布の漸近的挙動を解析的に明らかにする。 3) 実証研究、理論研究で得られた結果に基づき、金融資産保有のリスクに他する間欠性の影響の大きさを見積もる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は実証分析のための日経NEEDSティックデータ、分析に使用するPC等の支出を行う。
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