高度な情報通信技術(ICT)を活用した社会イノベーション(Society 5.0,DX)が期待されている.イノベーションを成功に導くにはプロジェクトマネジメント(以降PMと記)が重要であるが,その成功率は50%にも満たない.PM研究へのAI(機械学習)技術の導入は,従来のPM研究とは異なる切り口で新たな知見が導出される可能性がある.本研究課題では,PM行動がプロジェクト(以降PJと記)スケジュール・コスト等へ及ぼす影響を導出可能なPJ挙動シミュレータと与えられたPJ評価基準の下で準最適なPM行動を学習するAI(機械学習)エージェントを仮想実験環境として構築し,これらを用いてPJとその環境に内在する局所最適化構造の導出とその解決策としてPJ局所最適化抑制法の確立を試みる. 仮想実験環境の全体アーキテクチャの見直しを行った結果,仮想実験環境として汎用的なシミュレータを開発するのではなく,個別事例に対応して容易にビジネス環境シミュレータを構築できる仕組みを整備する方向に方針を転換し,構築方法を整理体系化した.2023年度は,組織の判断ロジック組込指針を整理し,またパターン言語による知識整理の可能性を示した.査読付論文1件,発表2件 (国際P2M学会 発表奨励賞、日本システム・ダイナミクス学会 優秀発表賞を受賞). 研究期間全体を通しては,プロジェクトの直接のSQCD目標を評価指標とするのでなく,プロジェクトが置かれたビジネス環境のシミュレータを構築し,シミュレーションを通じプロジェクト完了後のアウトカム/インパクトを推定し評価指標に加えることで局所最適化が防止できることを,AI(機械学習エージェント)を用いた仮想シミュレーションにより準数理的に導出できた.査読付論文4件,発表9件 (国際P2M学会 発表奨励賞2件,日本システム・ダイナミクス学会 優秀発表賞を受賞).
|