研究課題/領域番号 |
20K04975
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
坂部 創一 創価大学, 理工学部, 教授 (50235165)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新型うつ傾向 / レジリエンス / 共感的ネット利用 / ネット依存症傾向 / デジタル認知症傾向 |
研究実績の概要 |
当初,新型うつ傾向とレジリエンス(精神的回復力)を中心とした関係性に着眼していたが,下記の複合連鎖の可能性とレジリエンスの抑制効果も検証した。 情報環境の進展とともに増加するネット依存症傾向とデジタル認知症傾向および新型うつ傾向との連鎖的悪化の可能性を大学生を対象にした調査データでモデル化し,予備軍の段階での予防策を分析した。新型うつとは,従来型うつと対照的で,主として仕事や勉学をしようとする時にのみ強い疲労感や不調感を訴えて逃避的傾向を示し,自身への批判に弱いと共に自責感に乏しく他罰的でその不調を会社(学校)や上司・同僚(教師・友人)のせいにして根に持つ傾向を示す。ネット依存症傾向はインターネットへの過剰依存の程度を意味する。デジタル認知症傾向は,受動的なインターネット利用に伴う認知機能低下の自覚症状の強さの程度を指し,この得点が高いとデジタル認知症傾向が強いことを示す簡易尺度を開発し分析に用いた。ネット依存症傾向および新型うつ傾向に共通の現実逃避的行為が,能動的な思考を伴わないデジタル認知症傾向尺度の構成要因である受動的ネット利用を助長し,自覚的な認知機能の低下をもたらすと推測する。また,その認知機能の低下が新型うつ傾向を悪化させているリスクも考えられる。そこでこれら複数要因の悪化傾向の複合連鎖を共分散構造分析モデルで検証し,この連鎖を抑制するレジリエンス向上効果の有意性を縦断分析したところ,今回のケーススタディではこれらの関係性が検証された。 また,そのレジリエンス向上に関わるインターネット利用効果分析として,メールやSNSで苦楽を共有し相互に励ましあう共感的ネット利用が,SNS疲れやネット依存症傾向への悪影響を考慮してもレジリエンスを向上させることが,今回の縦断分析のケーススタディーでは検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように,「新型うつ傾向予防のためのレジリエンス向上に関わるインターネット利用効果分析」の研究テーマに対し,順調に仮説の縦断的検証が進み,インターネット利用の中でもメールやSNSで苦楽を共有し相互に励ましあう共感的ネット利用がもたらすレジリエンス向上効果の有意性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は,共感的ネット利用尺度を検討し,必要があれば改訂を行い再調査と分析を行う予定である。また,共感的ネット利用のレジリエンスとQOL(Quality of Life)へ及ぼす影響度を他の要因と比較することも試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新年度に,今回の仮説検証の一般化をはかるために,特定の大学の大学生だけではなく,一般の大学生を対象としたインターネット調査を検討しているために新年度に予算を繰り越した。
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