研究実績の概要 |
流動性を計測するための人工市場シミュレーションシステム構築にあたり、本年度はまず実証研究等先行研究の調査を行い、金融市場で主流の流動性指標が4つ(Volume, Tightness, Depth, Resiliency)あることを確認した。そしてそれら流動性指標間の関係性について整理することを試みた。ところがこれらの関係性については実証研究によって相反する結果を示していることがわかった。そこで人工市場を利用してどちらの結果が的確なのかを調査した。 実験方法としては人工市場の内部要素の値を試行錯誤的に変更する手段を取り、各指標およびそれらの関連性に影響を与える内部要素を明らかにした。上述のように実証研究において結果が相反する理由を市場内部メカニズムを分析することで解析したところ、取引頻度がモデルに反映されていないことが原因であることが判明した。その対応を行ったところ、これまでの相反する結果と整合性のある結果を導くことに成功した。 一方、近年アメリカではマーケットメーカーにリベートを支払うことで注文を積極的に出してもらおうとするメイカー・テイカー制が注目を浴びている。この制度によって市場流動性が挙がることが期待されているが、本件に関しても実証研究では賛否両論である。よってこの制度が流動性に与える影響を調査する人工市場構築も行った。実験の結果、流動性は向上する傾向がみられるものの、メーカーのリベートの原資となる手数料を支払うテイカーには予想通り負担を強いる結果が得られた。
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