研究課題/領域番号 |
20K04979
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 社会システム / シミュレーション / 被験者実験 / 人工市場 |
研究実績の概要 |
ノートレード定理に従えば乖離がゼロになるだけでなく、人々は取引自体行わないことになるが、実市場では人々は取引を行う。価格乖離が発生する一つの有力な説明としては、将来の資産価格に対する不均一な期待を人々が持つことが原因とする説がある。つまり、将来価格を高く見積もる人と低く見積もる人が共存することが背景にあるという考え方である。本年度の研究では、資産市場において、他者の短期および長期の予測が集団内で共有知識となることが、取引価格とファンダメンタル価格との乖離に与える影響に関する被験者実験研究を行った。分析結果をまとめた結果は現在投稿中である。また、中央銀行による量的緩和に関する実験的研究が国際学術誌Journal of Economic Dynamics and Controlに採録された。この研究では、国債の取引を模した実験室市場において、資産が現金の完全代替の状態で、合理的な期待の均衡の下では資産のファンダメンタル価格が一定値を持つような条件下において取引を行うようにした。実験の中で、各取引の直前に参加者は将来価格の予測を行い提出する。それらの予測と価格変動との関係を念頭に分析した。分析の結果、繰り返される取引の過程で、(仮想的な)中央銀行による資産の買い入れ介入が行われた後から取引価格が上昇することが確認された。介入がない場合、ファンダメンタル価格からの取引価格の乖離は市場取引の経験を繰り返すと共に小さくなることが既存研究で知られていたが、介入があるとファンダメンタル価格からの乖離が維持されることが明らかになった。(なお、本申請テーマとは直接の繋がりはないが、社会的ジレンマ状況における相互作用と学習の局所性が協力行動の進化に与える影響を分析したエージェント・シミュレーション研究が国際学術誌 Scientific Reportsにて出版された。)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの感染拡大によって被験者実験研究の遂行が困難になったが、以前の実験結果に関する分析結果の一つが査読付学術誌に採録され、また、もう一つも査読付学術誌への投稿済みである。加えて、資産市場研究とは異なるものの、社会的ジレンマに関するシミュレーション研究が査読付学術誌に採録されている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は2年目だが、新型コロナウイルスの感染状況の見通しが付かないため、実験室における被験者実験でなく、オンラインで同時参加の取引ゲームを行う実験環境を今年度の早い段階で整え、被験者実験研究の再稼働を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大により、被験者実験の遂行、および、国内外の出張が困難になった。
|