研究課題/領域番号 |
20K04983
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
胡 艶楠 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 講師 (00778326)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 長方形詰込み問題 / 長方形ストリップパッキング問題 / 取り出し順序制約 / 2列配置制約 |
研究実績の概要 |
本研究では長方形を詰め込んだ後の長方形の取り出しに制約を課した取り出す順序を考慮する長方形詰込み問題を考えた.本問題では,長方形の集合に対してその取り出し順序が与えられる.すべての長方形はその順序通りに容器から真上方向に取り出せることを保証しながら,幅が固定された容器に効率よく配置することが本問題の目的である. 今年度は取り出す順序を考慮する長方形詰込み問題に対して,一般の長方形詰込み問題に対する代表的な手法であるbottom-left法(BL法)に基づいて,新たな構築型解法adaptivebottom-stable法(ABS 法)を提案した.ABS法は与えられた長方形を取り出す順序の逆順に一つずつ空の容器の状態から配置していく.新たな長方形を配置する場所は,その長方形を配置しようとする段階でのレイアウトにおいて左にも下にも動かせない,あるいは右にも下にも動かせない点(bottom-stable点(BS点)と呼ぶ)の中から周囲の既配置長方形たちと相性が良い点を選択する.BS点に対する三つの選択戦略を提案し,計算実験により性能を確認した. また,長方形ストリップパッキング問題において,与えられた長方形集合の中の任意の3 つの長方形の幅の合計がストリップの幅より大きくなる問題を考えた.この問題を配置が2 列になる長方形ストリップパッキング問題と呼ぶ.現実での応用としては,トラックの荷台への荷物の効率的な積載などが挙げられる.本研究では,まずこの問題の計算複雑度を分析し,NP困難であることを証明した.また,この問題に対して擬多項式時間の動的計画法及び完全多項式時間近似スキームを提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り取り出す順序を考慮する長方形配置問題に対する研究を行った. まず,取り出す順序を考慮する長方形配置問題に対して,長方形を取り出す順の逆順で容器に一つずつ詰め込む構築型解法adaptivebottom-stable法(ABS法)を考えた.新たな長方形を詰め込むとき,左あるいは下に動かそうとすると既配置の長方形と重なるまたは容器からはみ出るため左にも下にも動かせない,あるいは右にも下にも動かせない位置を,bottom-stable点(BS点)と呼ぶ.ABS法は新たな長方形をその長方形を配置しようとする段階でのレイアウトにおけるBS点に配置する.BS 点の選択戦略に対して,新たな長方形をそのBS点に配置したときの評価関数v-gapとh-gapを導入する.v-gapは配置する長方形の上辺のy 座標と隣接する既配置の長方形の上辺のy 座標の差とする.h-gapは既配置の長方形と接していない下辺の長さである.BS点の中から配置場所を決定する三つの選択戦略を提案する:(1) 最も下の点(複数ある場合はその中の最も左の点),(2) v-gap+h-gapの値が最小となる点,(3) v-gap×wi+h-gap×hiの値が最小となる点.長方形の数が256となる問題例を100個を作成し,三つの選択戦略により得られた配置レイアウトの平均充填率が86%程度となることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の4点で研究進める. (1) これまで研究した取り出す順序を考慮する長方形配置問題に対する提案したABS法において,さらに性能が良いBS点の選択戦略を検討する. (2) ABS法の理論的な時間計算量を改善する手法を考える.すでに配置した長方形の位置を変更できない特徴を利用して,平衡探索木などの高度なデータ構造を設計することにより,理論上の計算量を削減することを検討する. (3)取り出す順序制約について,長方形を容器から取り出す際に真上方向の移動のみを許すことを一般化にして,平行と垂直方向の移動により取り出すことも許すような制約を考える.そのときの長方形の取り出すルートと配置アルゴリズムを検討する. (4)取り出す順序を考慮する長方形配置問題に対する研究で得られた成果を三次元荷物を下ろす順番を考慮する直方体配置問題に拡張する.下ろす順番を考慮する直方体配置問題は,直方体とその下ろす順番を与えられる時に,形状を固定される直方体の容器にできるだけたくさんの直方体を配置する問題である.まずは下ろす順番を考慮する直方体配置問題に対する高速な構築型解法を設計する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年10月の出産により,予定した出張や研究協力者への謝金などを使用しなかったため,次年度使用が生じた. 今年度は専門書と高性能な計算機を購入する予定である.研究協力者に知識提供において多大な労力をおかけした時に謝金を支払う.また海外発表のための旅費も支出する.
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