研究課題/領域番号 |
20K04988
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
辛島 光彦 東海大学, 情報通信学部, 教授 (90264936)
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研究分担者 |
濱本 和彦 東海大学, 情報通信学部, 教授 (50266368)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歩行者用シミュレータ / VR環境 / 全方向歩行可能歩行デバイス / 速度感 / 距離感 |
研究実績の概要 |
近年「歩きスマホ」に代表されるように歩行者の危険行動が指摘され,歩行行動特性を明らかにし歩行者のための安全対策の検討を行う必要性が示唆されている.歩行行動特性の検討は,実空間の歩行実験を通じて行われているのが主流であるが,実空間の歩行実験は安全の観点から倫理上の制約が伴い歩行シーンが限定的となる.そのため歩行行動特性の解明には安全上の制約を受けにくい歩行者用シミュレータの活用が期待され,本研究では歩行者が実空間と同様に歩行環境を体感できるVR環境を用いた一般的な歩行環境を再現できる歩行者用シミュレータを開発することを目的とした. 本年度は歩行者用シミュレータの基本要件を満たしたVR環境における全方向歩行可能な歩行デバイスを用いたシミュレータのプロトタイプを用いて,現実環境における歩行の際の速度感と距離感との比較検討を行うための実験を実施した.なお没入型VR環境による実験はVR環境のスペック不足のために本年度は実施することが出来なかったためHMD(Head Mounted Display)を用いたVR環境にて実験を実施した. 実験の結果,速度感,距離感については歩行デバイス特性が影響を与えることが確認され,VR環境下のオプティックフローを歩行デバイス特性に合わせて調整することにより現実環境と同様の状態にできることが示唆された. 当初2021年度に実施予定であった従来の実空間における異なる限定的な歩行環境において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認については上半期のコロナ禍に伴う大学校舎内への入構制限等の影響により被験者の確保が困難であったため,実施することができなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度も2020年度に引き続きコロナ禍により研究を研究実施計画通りに進捗させることが困難であった. 具体的には,4月から9月までは昨年度に引き続き学内への入構に一定の制限が課せられ,結果として研究活動にも制約が生じてしまい,昨年度と同様に計画していたエフォートを本研究活動に割くことが出来なかった.また学生の校舎内での滞留に制限が生じていたため,サポートの学生の確保が予定通りには行えなかった.さらに10月以降も含め人を対象とする研究の倫理的観点から,コロナ禍における被験者の確保は困難を極め,学内での被験者を用いた実験の計画,実施に大きな制約を伴った. そのため2020年度に計画していたシミュレータの速度感,距離感の現実性を確保する要件抽出の実験は実施できたものの,当初実施予定であった従来の実空間における異なる限定的な歩行環境において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験は実施できておらず,研究の進捗状況に遅れが生じている状況となってしまった. 合わせて当初予定していた没入型VR環境については,速度感,距離感に関する実験に対してVR環境のスペックが十分ではなく動作が不安定となったため,2021年度はHMDを用いたVR環境にて実験を実施した.2022年度は没入型VR環境の十分なスペックを確保し,没入型VR環境にて実験を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,没入型VR環境については,VR環境のスペックが十分ではなく動作が不安定となったため,2021年度はHMDを用いたVR環境にて実験を実施したが,2022年度は没入型VR環境の十分なスペックを確保し,没入型VR環境にて実験を行う予定である. 2022年度は,まず当初実施予定であった従来の実空間における異なる限定的な歩行環境において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験を実施する予定である.再現性の確認後,当初実施予定通り,一般的な歩行環境を対象とした歩行シーンとして,研究代表者が過去に実施した実空間における歩きスマホに関わる歩行実験と同様の歩行環境における歩行シーンをシミュレータ上で再現した場合の歩行行動特性の再現性を確認する実験を実施する予定である. 本研究に割り当てるエフォートを当初の計画より高めることで進捗状況の遅れを取り戻すことを目指す.ただし本年度も昨年度と同様,コロナの感染状況が実験実施に影響を与える可能性は特に被験者確保の点で否定できない.そこでこの可能性への対応策として,あらかじめ年度初めより実験の期日を指定せず,コロナの感染状況が沈静しているタイミングで実験に参加するという条件を了解する被験者を募集し,コロナの感染状況が沈静しているタイミングで遅延なく実験が実施できるように準備する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き2021年度も特に上半期においてコロナ禍に伴う大学校舎内への入構制限等の影響により被験者の確保が困難であったため,2020年度に計画していたシミュレータの速度感,距離感の現実性を確保する要件抽出の実験は実施できたものの,当初実施予定であった従来の実空間における異なる限定的な歩行環境において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験は実施できておらず,そのため研究の進捗状況に遅れが生じている状況となり,次年度使用額が多額に生じてしまった. 2022年度はまず次年度使用額を用いて没入型VR環境の十分なスペックを確保し,没入型VR環境にて当初実施予定であった従来の実空間における異なる限定的な歩行環境において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験を実施する予定である.再現性の確認後,2022年度支払い請求額を用いて当初実施予定通り,一般的な歩行環境を対象とした歩行シーンとして,研究代表者が過去に実施した実空間における歩きスマホに関わる歩行実験と同様の歩行環境における歩行シーンをシミュレータ上で再現した場合の歩行行動特性の再現性を確認する実験を実施する予定である.
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