| 研究課題/領域番号 |
20K04989
|
|---|
| 研究機関 | 法政大学 |
|---|
研究代表者 |
田村 信幸 法政大学, 理工学部, 准教授 (00349226)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
| キーワード | セミマルコフ過程 / 再生過程 / 非斉次ポアソン過程 / 小修理 / 最適保全方策 / 単調性 |
|---|
| 研究実績の概要 |
前年度に引き続き，取り替えが必要となる大規模故障と修理が行われる小規模故障の二種類が発生するという状況の下でセミマルコフ過程に従って劣化するシステムに対する最適保全方策について研究を行った．特に小規模故障は非斉次ポアソン過程に従って発生すると仮定しているため，二つの確率過程に基づいたモデルを提案している点がこの研究の新規性の一つとなっている．これについて，前年度は単位時間当たりの期待費用を最小とする保全方策はコントロールリミットポリシーと呼ばれる形が最適となることまで理論的に明らかにしていたが，今年度は他に新たな二つの性質を示すことができた．コントロールリミットポリシーに関しては，厳密には前年度に得られていた結果であるが，成立するための十分条件が厳しすぎたため，これらを少し緩めても同様の結果が得られることを理論的に示した．この研究に関しては既に論文としてまとめ，学術雑誌へ投稿して採択となり，掲載されることが決まった．
この研究の他，劣化の進行が離散時間マルコフ連鎖に従うシステムについて，運用される環境の変化を考慮したときの最適保全方策について研究を行い，コントロールリミットポリシーが成立するための十分条件を導いた．この研究では，運用される環境が完全に分かっていると仮定したが，少し厳しすぎて現実には成立しないケースが多いという問題が残されている．
これと並行して修理の不完全性を考慮した研究について，特に修理によりどの程度システムの機能を回復させることが適当かという点に着目した研究を行った．これはシステムの劣化が離散時間マルコフ連鎖に従うという非常に簡単な仮定であるが，先に述べた運用環境を考慮したシステムへ導入するための準備を行うという立場であり，そのような観点では意味のある結果が得られたと考えられる．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の保全方法が得られるシステムを想定した場合に関してはある程度の結果が得られたが，今後の発展のためには得られた十分条件を緩める必要がある．この際，数値実験により得られた結果を理論的に検証するという流れで研究を行う必要があり，これらの作業を同時並行で行っていたため予想以上に時間を要した．また，当初の目的である複数の観測方法という概念を導入するには，これまでとは異なる理論が必要であり，その理論の拡張可能性の検証がまだ終わっていないという状況である．以上の二点が進捗がやや遅れている理由である．
|
| 今後の研究の推進方策 |
観測方法に着目する上で必要な理論，特に確率的順序関係について，2017年に提案された新たな概念を運用環境に関する情報が不完全であるという状況への適用可能性を検討する．具体的には，先行研究を基にした様々な十分条件をどの程度緩めることができるかを理論的に調べることを目的とするため，今のところ意味のある結果が全く得られないということはないと推測している．十分条件が多少厳しくてもここで得られた結果を用いれば，当初の目的と直結する研究を進めることができる．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き，コロナ禍ということで学会や国際会議がオンラインでの実施または中止となったため，当初の予定ほど参加費と出張旅費が必要なくなった．最近は中止されることはまずなく，ハイフレックスかオンラインで開催される形となったため，次年度はそれらに参加し情報収集を行うために使用する．これに加えて，前年度作成途中となった論文を完成させる際の英文校閲のためにも使用する予定である．
|
