研究課題/領域番号 |
20K04997
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
城野 克広 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60509800)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブロックチェーン / スマートコントラクト / 測定の不確かさ / 適合性評価 |
研究実績の概要 |
事前に定めたルールに沿って試験・検査が行われているかという試験・検査の『手続き上の信頼性』を向上させるための研究について、2022年度はマイクロピペットの性能試験を例にとり、試験・検査を実施する者の資格の付与などを含めた情報をデジタル化することで、事前に必要な情報が揃っており、実際に測定においても事前に定めた試験・検査条件が達成されていることを確かめるシステムを構築した。また、その成果について国際会議にて発表した。 この中では、個々の資格付与などのイベントや試験・検査のデジタルデータのハッシュをブロックチェーンに登録することで、情報の信頼性を確保する。また、各段階でデジタル署名を用いてデータの真正性を検証することを行い、ブロックチェーンに登録する以前のデータが改ざんされていないことを確かめる。デジタル署名を用いて、データの真正性を確認することは新しい技術ではないが、試験・検査におけるどの段階でデジタル署名を用いることで有効にデータの検証ができるかについて、有効な一つの手順を本研究では提案した。 適合性評価を行うのに十分に小さい測定の不確かさが実現できているかという試験・検査の『技術的な信頼性』の向上を行う研究について、2022年度は誤った適合性評価を行ってしまうコストを考慮して得られる利潤を最大化する方法を提案し、2報の論文が採択・掲載された。本研究では、量産品の検査プロセスにおいて、偶然と系統の両方の測定の不確かさを加味した新しい意思決定の方法について報告した。 特に、発表した系統効果を測定の不確かさの一つの要素と見なした場合の解析は、この研究では従来の研究では検討が不十分だった、系統効果の取り扱いについて確率に基づくリスク管理の概念を取り入れることで、最適な意思決定を実施するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前に定めたルールに沿って試験・検査が行われているかという試験・検査の『手続き上の信頼性』については、2022年度・2023年度にはブロックチェーンに登録する以前の情報の改ざんを防ぐ方策について研究する予定であった。実際のところ、デジタル署名を利用した検証を組み合わせることで、試験・検査における適合性評価結果の信頼性の向上に資する一つの方法を提案することができ、学会発表を行った。 また、測定が十分な精確さで実施されているかという試験・検査の『手続き上の信頼性』については、2022年度・2023年度には系統効果がある場合の、適合性評価について研究を進める予定であった。系統効果を不確かさの一つの要素としてみなした場合の適合性評価について研究を進め、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
試験・検査の『手続き上の信頼性』については、今後、ブロックチェーンに使用するサーバーの数を増やしたり、異なるユースケースに拡張したりすることを通して、様々な試験・検査においての検証の流れやポイントを整理することを進める。また、学会発表や論文発表を行うことで、本研究の学術的な成果の普及に努めることを行う。試験・検査の『手続き上の信頼性』については、系統効果の影響について、より一般的な状況を考えて拡張を行い、適用範囲を広げる研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にて参加予定であった国際会議がオンラインで行われ、旅費などに充てる予算を使用できなかったため。この予算は2023年度の国際会議の参加や論文発表のための費用として使用する予定。
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