研究課題/領域番号 |
20K05001
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松岡 常吉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90633040)
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研究分担者 |
出原 浩史 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50515096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火災 / 固体燃焼 / 不安定性 / 並行流 |
研究実績の概要 |
酸素供給が制限された環境で可燃性固体が燃焼する際,不安定性により固体上を燃え拡がる火炎が小さく分裂することが知られている.火炎が分裂すると消火が困難となるため,分裂が生じる臨界条件や分裂後の燃え拡がり挙動を理解することは火災安全上重要である.これまでに火炎の進行方向に対して反対方向から酸素が供給される「対向流燃え拡がり」と呼ばれる系については多くの研究例があるが,火炎の進行方向と同じ方向に酸素が供給される「並行流燃え拡がり」を対象とした研究は限られている.本研究は,並行流燃え拡がりにおける火炎の燃え拡がり方向を決定するメカニズムを明らかにすることを目的とする.2020年度は,様々な条件で実験を行うために風洞装置の改良と,それを用いた実験を実施した. 本研究では,円形の薄い紙を2枚の板の間の狭い空間に設置し,紙の中心部で着火するとともに,着火により生じた穴から酸素を放射状に供給して燃焼させる.このとき,火炎は供給される酸素の流量や隙間高さに応じて様々な挙動を示す.これまでの予備検討において,その挙動が着火時に形成される火炎の一様性や風洞の水平度に大きく影響され,既設の風洞装置では再現性良く実験を行うことが難しいことが明らかとなった.そこで今年度は,着火用バーナーの調整やアジャスターの追加など,再現性良く実験を行うことができるよう装置を改良した.この装置を用いて供給する酸素の流量と流路の隙間高さを変化させて実験を行い,酸素流量が小さい条件において火炎が分裂して燃え拡がることを確認した.また,酸素流量が小さく,かつ隙間高さが比較的大きい場合には,燃え拡がりがらせん状に進行することを明らかにした.また,実験で得られた画像から火炎の個数や大きさ,燃え拡がり速度などを定量化するための画像解析手法を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験装置の改良と画像解析コードの開発が完了し,酸素流量と隙間高さを変えた実験の実施と得られたデータの解析も進んでいることから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,様々な条件での燃え拡がり実験およびデータ解析の準備が整った.今後は様々な条件で実験を実施し,燃え拡がり方向に関する基礎データを取得するとともに,最終年度に実施を予定している2次元の数値シミュレーションの準備を進める. 実験については,固体の燃え拡がりにおける酸素の重要性を考慮し,供給する酸化剤中の酸素濃度を変えることができるよう現状の装置をさらに改良する.改良した装置を用いて,隙間高さおよび酸化剤の流量と酸素濃度を変化させて実験を行い,燃え拡がり方向と実験条件との関係について整理する.なお,次年度は固体に対して一方向に酸素を供給して燃焼させる実験を実施する.その理由は,今年度行った円形の紙を用いた実験では,火炎が酸素の流れに対し垂直に燃え拡がる場合の挙動を目視で確認しやすいものの,酸素流速が火炎の位置に応じて連続的に変化するため特性値を正確に評価することが難しいためである.そこで,当初予定していた可視化実験に代わり,矩形の薄い紙を試料に対して一方向に一様に酸素を供給して燃焼させることができる風洞装置を開発し,実験を行う.この系では燃焼が進行しても酸素流速が変化しないため,パラメータの影響を正確に評価できると期待される. 数値シミュレーションの準備として,2次元系の燃え拡がりモデルの構築を行う.化学反応を伴う熱流体力学の支配方程式を導出し,数値計算を行うためのコードを開発する.代表的な条件においてシミュレーションを実施し,実験結果とシミュレーション結果を比較してモデルの妥当性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,コロナ禍で出張が困難となり研究分担者との研究打ち合せを延期したからである.なお,今年度は対面での打ち合わせができなかったため,代わりにオンラインで打ち合わせを行った.
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