本研究課題は大きく2つの項目に分けられる. 1.断面風速に対する成層煙の動挙動特性 平成4年度に製作した模型トンネルを,予備実験を繰り返して煙の降下位置や温度分布の計測精度を向上させた.その結果,より広範囲の計測が可能になり,煙降下範囲の時間変化など従来計測できなかったことが可能になった.そのとして,降下位置は火源からx/H=20~40(Hはトンネル高さ,xは火源からの距離)で,火源規模が大きくなるほどx/Hが増加する傾向であることが分かった.また,風速をステップ状に変化させた場合の煙先端位置の変化について計測し,先端位置の動特性について計測を行った.これらの結果は水平トンネルの場合について平成6年に発表予定である. さらに代表者が開発した煙流動解析3次元シミュレータ(fireles)により,30MW火災規模の場合について,煙成層状態に対する風速と勾配による影響について検討を行った.その結果,10分を越えると急激かつ広範囲で煙降下が発生するため,避難は10分以内に完了する必要があることを明らかにした. 2.風速0化の効果的な運用法に関する検討 日本では風速を0m/sとすることがあるが,実際のトンネルでは勾配や風速条件は様々で,煙の成層状態を維持し得る風速は必ずしも0m/sとは限らない.そこで,シミュレーションによって煙の成層状態を長く維持し得る風速について調べた結果,矩形断面の場合は1m/s前後,馬蹄形断面の場合は0.3~0.9m/sの風速が適切であることを明らかにした.この「渋滞時の火災事故において煙の成層状態を維持することによって避難環境を長く維持し得る風速は0m/sではない」という結果は,今後の非常時のトンネル換気運用に大きな影響を与える結果であり,平成5年度中に公表した.
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