研究課題/領域番号 |
20K05009
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研究機関 | 公立諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
志村 穣 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 准教授 (70390424)
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研究分担者 |
高田 宗一朗 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (30835517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 応力拡大係数 / き裂検出 / 応力聴診器 / ひずみ測定 / ひずみゲージ / FEM解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の実施内容は構造材料のき裂検出およびき裂の応力拡大係数解析の双方を含んでいる.き裂検出部分は共同研究者の髙田氏が,き裂の応力拡大係数解析部分は志村および研究協力者の黒﨑氏が主に担っている. 具体的な実施内容として,き裂検出研究では,構造材料に欠陥もしくはき裂を擬似的に付与した試験片に対し,動的負荷を作用させ応力聴診器を用いて動ひずみを検出することでき裂検出を試行するものである.今年度はまず,その比較対象の基礎研究として,切欠きを有する厚肉梁を採り上げ,固有振動の観点から研究を進めた. 一方のき裂の応力拡大係数解析研究では,き裂の面内せん断型の変位様式(モードⅡ)を対象に,ひずみゲージを用いた解析手法,FEM解析手法および応力聴診器を用いた手法の三種に取り組んだ.試験片は薄板平板に対し,ワイヤーカット加工で所定のスリットを入れることで,せん断が支配的になる形状のものを設定した.このスリットを擬似的にき裂と見なし,き裂先端付近のせん断ひずみを測定し,解析式を用いてモードⅡの応力拡大係数解析KⅡを算出した.ひずみゲージは2軸直交型(ゲージ長1mm)を,応力聴診器を3軸型(ゲージ長3mm)を用いた.き裂の応力拡大係数の理論値は,K値ハンドブック等に記され,基本的な試験片形状に関しては一般化されているが,本試験片形状は新規であり,その理論値を定義する必要がある.そのため本研究では,FEM解析結果と外挿法を用いて理論値を求め,これを基準として,ひずみゲージによる場合,応力聴診器を用いた場合の応力拡大係数を誤差率という形で評価した.結果として,2軸直交型ひずみゲージを用いた場合では,き裂先端に近いほど解析誤差が小さくなることが確認された.また,応力聴診器の場合は,そのゲージ長が3mmであるため,ひずみゲージの時よりき裂先端から距離をある程度取った方が解析精度が高くなる傾向が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り,本研究課題はき裂検出およびき裂の応力拡大係数解析の二本柱である.今年度の実施内容は,理論の確認,実践および実験方法の確立である.特に,応力拡大係数解析の研究では,肝となる擬似き裂試験片において改良点が見つかるとともに,今後の発展に繋がる有益な知見が得られた.くわえて,先行研究のひずみゲージ手法をトレースする中で,筆者らの新たなアイディアを導入する余地を見出すことができ,解析精度の向上に寄与できるものと期待している.研究進捗状況としては,これまでの研究成果を学会にて3件の口頭発表することができており,概ね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
筆者が主に担当している,本研究課題のうちの応力拡大係数解析の研究について,その方向性はこれまでと同様であるが,試験片材料および擬似き裂サイズの変更を計画している.初年度は試験片材料として軟鋼を使用していたが,その降伏応力の低さが解析精度に影響を及ぼすことが考えられるため,ステンレス鋼への変更を予定している.また,擬似き裂のスリット幅を現状のおよそ0.3mmから0.12mm程度へ変更し,より現実のき裂に近い状況で実験を行うことを考えている.くわえて,現在使用しているひずみ検出要素は2軸直交型ひずみゲージおよび3軸型応力聴診器であるが,それぞれを1軸(直交)型に置換できる可能性があるため,これらの導入を試行する.
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