本研究課題の実施内容は構造材料のき裂検出およびき裂の応力拡大係数解析の双方を含む.き裂検出研究では,構造材料に欠陥もしくはき裂を擬似的に付与した試験片に動的負荷を作用させ,応力聴診器を用いて動ひずみを検出することでき裂検出を試行するものである.初年度はその比較対象の基礎研究として,切欠きを有する厚肉梁を採り上げ,固有振動の観点から研究を進めた.一方のき裂の応力拡大係数解析研究では,面内せん断型の変位様式(モードⅡ)を対象に,ひずみゲージを用いた解析手法,FEM解析手法および応力聴診器を用いた手法の三種に取り組んだ.試験片は薄板平板に対し,ワイヤーカット加工で所定のスリットを入れた引張せん断平板試験片を製作した.このスリットを擬似的にき裂と見なし,き裂先端付近のせん断ひずみを測定し,解析式を用いてモードⅡの応力拡大係数解析KⅡを算出した.ひずみゲージは2軸直交型(ゲージ長1mm)および1軸せん断ひずみゲージ(ゲージ長2mm)を,応力聴診器は3軸型(ゲージ長3mm)を用いた.FEM解析結果と外挿法を用いて理論値を求め,ひずみゲージによる場合,応力聴診器を用いた場合の応力拡大係数を誤差率という形で評価した. 最終年度は昨年度と同様に,応力拡大係数KⅡ解析研究に注力し,その深化に努めた.具体的な実施内容は1軸せん断ひずみゲージの導入および試験片厚さを昨年度の2.3mmから3.0mmへと変更したことである.試験片の厚さを増やし剛性を高めることで,昨年度問題となっていた試験片の負荷時のねじれを解消した.これにより,2軸直交型ひずみゲージを用いた場合では,全ての試験片において±10%内の良好な解析精度が得られた.1軸せん断ひずみゲージでは,2軸直交型と同等の解析精度が得られた.また,応力聴診器を用いた場合では一部の結果を除き,±10%内の解析精度が得られ,その有用性が示唆された.
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