研究課題/領域番号 |
20K05016
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
南山 靖博 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (20549688)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 受動制御 / MR流体 / MRブレーキ / 安全接触 / 本質的安全設計方策 / 空気圧ゴム人工筋 |
研究実績の概要 |
市販されていたMRブレーキは種類が少なく大型であり,また生産が中止されたため,独自にMRブレーキを設計し,各実験装置に適したMRブレーキの作製を行っている.これまで学生に任せていた設計を自分で見直し,小型軽量化を向上させ,組み立て中にMR流体が漏れないよう内側のカーラーでもネジを締めるようにし,そのネジを締めると全体が密着する構造にする.強磁性体と非磁性体を効率よく配置することで,MR流体に磁束密度を集中させる.非磁性体の部品作製に3Dプリンタを使用し複雑な形状の部品を作製する. そのMRブレーキを使用し,軸を持ち上げ方向に回転させ,本体にアームと錘を取り付けることで,電圧を上げるとアームが持ち上げ方向に回転し,電圧を下げると重力により下げられる実験装置を作成し,連続位置決めと正弦波軌道追従制御の実験を行う.また,2軸に拡張させ円軌道追従と直線軌道追従を行う. またMRブレーキ2つを作製して組み合わせ,軸に2つの異なる回転をそれぞれに与え,各ブレーキの印加電圧を制御することにより,水平方向の回転を制御する拮抗揺動型MRアクチュエータを作製し,制御実験を行った.さらにこのシステムを2リンクに拡張させ,円軌道追従制御を行う. 揺動型空気圧アクチュエータに作製したMRブレーキを取り付け,2軸に拡張させブレーキ制御による円軌道追従と直線軌道追従制御を行う. その他,MRブレーキと空気圧ゴム人工筋を使用し,1対(2本)の人工筋で2軸の制御が可能な装置においては,人工筋の強力な張力に耐えられる高い制動力を持つMRブレーキを作製する.通常,1軸に対してそれぞれ1対以上の人工筋が必要なため,2軸を駆動させるためには2対(4本)の人工筋が必要であるが,2つMRブレーキによって駆動させる軸を切り替えることによって1対の人工筋で2軸を駆動させる.ブレーキを掛けていない状態でのトルクが大きいため,現在新たなMRブレーキを設計する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度も新しく配属された学生を中心に,これまで作製したMRブレーキの問題点などを基に新たなMRブレーキの作製を行った.これまで設計を学生にほとんど任せていた為,自分でMRブレーキの設計を行い,小型軽量及び組み立て段階でMR流体が漏れない構造を目指した. アームの持ち上げ装置については,2リンクの実験装置に拡張させ2リンクによる軌道追従制御を行ったが,MRブレーキの軸角度におけるトルクのムラが大きくほとんど追従することが出来なかった. 拮抗揺動型MRアクチュエータは軸のずれなどを調整し,各リンクの正弦波軌道追従実験により良好な結果を得ることが出来た.円軌道追従においても追従性がみられた. 空気圧ゴム人工筋の実験装置は2リンクの装置を完成させ,プログラムの調整により,円軌道を追従することが出来た.誤差がまだ大きいため,プログラムの調整や装置の調整が必要である.得られた結果を基に国際学会に投稿したところ採択され,7月に発表予定である. 揺動空気圧アクチュエータは自分でMRブレーキの設計を見直し,無駄を省きより小型のMRブレーキを作製した.1つ目(1リンク目)は小型軽量にはなったが今までと変わらない物であった.2つ目(2リンク目)は最後にねじで締め付けると全体が締まる構造にしたところMR流体の漏れが無くなり,従来のMRブレーキよりも大きなブレーキトルクを発生させることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
自分で仕様設定から一人で行い,市販のMRブレーキより大きなブレーキトルクを発生させるMRブレーキが完成したため,各実験のMRブレーキを新たに作製し直し,制御性能向上を図る. アームの持ち上げ装置については,今年度担当する学生が居なかったため,一旦保留にし,時間を見つけて自分自身で設計からやり直す. 空気圧ゴム人工筋は国際学会発表に合わせて,再実験を行い発表までにより良い結果が得られるようにする.また,新たなMRブレーキを設計製作し,ワイヤで回転を伝達せず,各関節にMRブレーキを取り付け,直接各関節を人工筋によって回転させる装置を新たに設計製作する. 拮抗揺動型MRアクチュエータと揺動空気圧アクチュエータはMRブレーキを新たに設計製作し,新しい装置を作製し,制御性能向上を図る. これまでの実験成果を基に提案している囲い込み制御の理論を進展させ,安全制御理論を進展させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,実験は制御則をMATLAB/Simulinkによってプログラミングし,MATLABコントローラによって実装する予定だったが,1セット150万円するため,複数購入することが困難であった.実装の装置が1台のみであると,異なる実験を同時に行うことが不可能であり,違う実験をするために配線を繋ぎ変えるのは大変であるため,実験の小型化も考慮し,Arduino Uno,Arduino Dueを複数個購入し実装した.Arduinoは1つ3000円ほどなので,予算を大きく余らせてしまう事となった. また,コロナの影響により学会発表が遠隔で行われたため,全体的に旅費の使用額が少なくなっている. 使用計画としては,当初の計画通り安全性の検証のための力センサや動ひずみ測定器を購入する.また,2軸拡張や新たなMRブレーキ作製に必要なアクチュエータや部材を購入する.そして,磁束密度の解析を行うために磁場解析ソフトを購入する.
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