研究課題/領域番号 |
20K05031
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
有馬 昌宏 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 名誉教授 (00151184)
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研究分担者 |
川向 肇 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (30234123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ソフト防災 / 情報品質 / ハザードマップ / 防災アプリ / 避難情報生成 / 自主防災組織 / 全国ウェブ調査 / 組織活性化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは,ソフト防災の根幹である事前避難を事前避難が必要な住民や旅行者などの訪問者に確実に実行してもらうことができるような情報伝達アプリを作成することであり,そのプロトタイプとしての防災アプリ「ハザードチェッカー」の改良を行っている.2023年度は,素因情報としてのハザードマップと誘因情報としての気象庁からの警報やキキクルの情報を現在地などの指定地点でマッチングさせ,5段階の警戒レベルで示される避難情報を提供できる機能を実装し,スマートフォンからはツータップで避難の必要性の有無がわかるアプリとなるよう機能アップを図った.また,音声ガイドや多言語表示などのユニバーサル対応も図っている. 本研究のもう一つの目的は,安否確認や避難所運営などの共助を担う組織である自主防災組織の現状を把握し,ICTの利活用による活性化策を検討することである.2023年度には,自主防災組織の認知と関心と加入意識,加入の場合の対象災害種別や活動内容や参加頻度やICTの利活用状況や活動の有効性評価など,加入以外の場合の非加入理由や参加促進に有効な手段などを問う応募型のウェブ調査を実施して,3,207人からの有効回答を得ている.単純集計やクロス集計などの基本的集計作業からは,自主防災組織の2023年の85.4%の活動カバー率と自主防災組織の52.5%の認知率や12.6%の加入意識率との間には大きな乖離があり,自主防災組織の平時や発災時の活動におけるICTの利活用度の低さなどを示した. また,中長期的に見たソフト防災では,災害リスクのある場所への立地制限やリスクのある場所から安全な場所への移転が有効であるが,立地制限や移転支援などの防災対策の有効性を検証するKPIとしての災害リスクのある地域の災害弱者の属性にも注目しての人口や世帯の増減率を国勢調査の4次メッシュデータを利用して行う研究も行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,当初は3年の研究期間を設定していたが,新型コロナウィルス感染症拡大の影響で,自主防災組織の活性化に関する研究において,対面でのヒアリング調査の実施等に支障が生じるなどで研究期間の延長を行っている.この研究期間の延長により,研究4年目の2023年度中に自主防災組織に関する全国ウェブ調査を実施して研究計画の遅れの回復を図ることができ,これまでの研究の成果をまとめて発表する段階まで研究計画を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度として,自主防災組織の活性化に関する研究目的に関しては,昨年度に実施した全国ウェブ調査の調査データの詳細な分析を行って自主防災組織の抱える課題の抽出と活性化に向けての方策をまとめ,関連する学会での研究発表や論文としてまとめての投稿を行う予定である. 防災アプリ「ハザードチェッカー」の改修に関しては,使用しているデータの更新作業を行うとともに,多言語対応ならびに音声読み上げなどの機能の追加によるユニバーサル対応を継続して行う. 国や自治体の規制や市場誘導による,災害リスクのある地域に住民や事業所を立地させない施策の有効性評価に関しては,継続して国勢調査の4次メッシュデータを用いる評価手法の開発を継続し,既に近畿地方の府県の土砂災害のリスクのある地域に対する研究は行っているので,近畿地方以外の全国の土砂災害のリスクがある地域に評価手法を適用する研究を展開し,その結果については関連する学会での研究発表を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は,本来は2022年度末で終了予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大の行動制限の影響を受けて予定していたインタビュー調査などが実施できず,研究期間の2023年度末までの延長申請を行った.2023年度においては,当初の研究計画で示していながら実施の遅れていた自主防災組織に関する全国ウェブ調査を実施するなどで研究計画の完遂を目指したが,調査データの分析までを行うことができず,遅れを完全に取り戻すことが叶わず,研究をさらに1年間延長することとして,期間延長を認めらたところである .本年度は,過去4年間の研究を総括する期間と位置づけ,研究成果をまとめて学会等で発表するとともに,関係の学会の論文誌に投稿する予定で,旅費や論文投稿料として研究費を使用する予定である. また,防災アプリ「ハザードチェッカー」のユニバーサル対応化に向けて,コーディングや外国語への翻訳補助で謝金の支出を予定している.
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