研究課題/領域番号 |
20K05033
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
山根 悠介 常葉大学, 教育学部, 准教授 (10467433)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ストームに相対的なヘリシティー / 竜巻 / ダウンバースト / 突風 / 予測 / インド亜大陸北東部 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,研究推進に必要なデータセットの整備と解析対象とする突風事例の選定,これまでの国内外の関連研究の現状把握を主に行った。当該年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により海外渡航が不可能となり,加えて所属大学における例年にないオンライン授業への対応のための負担増などにより,本研究推進を当初予定通りに進めることが大変困難であった。このような状況の中で当該年度においては,まず研究推進に必要なデータセットの整備,特にコロナ禍であったが購入可能な国内のデータセットの整備を行った。日本全国の合成気象レーダーデータは京都大学生存圏研究所のデータベースのサイトよりダウンロードして入手した。このデータセットの内容の確認と前処理,解析のためのプログラムの構築を行った。また,気象庁ホームページに掲載の竜巻等突風データベースに記載の過去の突風事例を調査し,その中で解析に利用可能な気象レーダーデータや高層気象観測データが入手できる事例を調べ,解析対象とする事例の特定を試みた。バングラデシュ及びインド・アッサム州については,JRA55(気象庁55年再解析データ)を用いて,「ストームに相対的なヘリシティー」を55年間分算出した。スーパーセルの検出のためにはドップラー気象レーダーによるドップラー速度のデータが有用である。これらのデータセットを気象業務支援センターからの購入について手続きを進めた。しかし,業務支援センターにおいても、コロナ禍の影響でデータセットの準備に遅れが生じているとのことで,まだ入手ができていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度の研究進捗状況については「遅れている」と判断せざるをえない。その最大の要因は新型コロナ感染症の拡大である。まず,新型コロナの世界的な感染拡大により,本研究が対象とするバングラデシュ及びインド北東部への渡航が不可能となっており,現地に赴いてのデータ入手ができなかった。現在,現地気象局においては,オンラインでのコミュニケーションだけでデータを入手することは困難で,現地にて直接担当者と会って各種交渉を行い,またその場でデータ内容の確認等を行う必要がある。よって,バングラデシュ及びインド北東部に関しては,必要なデータセットを入手することができず,解析が予定通りに進んでいないのが現状である。国内を対象とした解析に関しては,データセットの購入手続きは進めているが,購入先の気象業務支援センターもコロナ禍の影響で発注したデータセットの準備に例年以上の時間がかかっており,まだ入手ができてない状況である。さらに当該年度は,所属大学においてオンライン講義が実施され,例年にないこれらへの対応に相当の時間と労力が取られてしまったことも研究を当初予定通り進めることができなかった大きな要因の一つである。以上のような現状の中,ひとまずオンラインで入手できるもの,或いはこれまでの研究活動で入手済みのデータセットを用いて限定的に研究を推進しているものの,計画通りに進んでいないということで,進捗状況については「遅れている」と判断せざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は前年度に比べ,油断はできないものの,新型コロナの感染状況がやや落ち着きを見せており,そのため所属大学においても例年通りの対面講義が主となっている。よって、前年度のような例年になかったオンライン講義への対応の負担は基本的になく,本研究推進のための研究時間を例年並みに確保できると考えている。また,気象業務支援センターに発注済みのデータについても,本年度前半には入手できると思われる。これまでに入手済みのものを含め,ひとまず現在手元にあるデータセットを用いて解析作業を行っていきたい。特に今年度は日本国内におけるこれまでの竜巻等突風事例(昨年度選定済み)について,入手した気象レーダーを用いてスーパーセル及びその移動速度を各事例について特定し,その実態把握に努めたい。ここで把握した移動速度を用いてSRHを算出し,これまで多く使われてきた米国における移動速度の算出方法によるものと比較し,その精度評価と改善を行う。インド亜大陸北東部については,データ数が不十分ではあるが,まず入手済みのデータセットを用いて上述の日本国内を対象としたものと同様の解析を行いたい。インド及びバングラデシュに関しては,オンラインのみでのデータ入手は困難と思われるが,現地の研究協力者と連絡を取り,直接渡航せずに限定的にでもデータの入手ができないか調整を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においては,「ストームに相対的なヘリシティー」の算出のためにスーパーセルの検出を行うことが重要であるが,これにはドップラー気象レーダーによるドップラー速度のデータが有用である。これらのデータセットは気象業務支援センターより販売されている。既に気象業務支援センターからの購入の手続きを進めた。しかし,購入するデータの量が膨大であることもあって,業務支援センターにおいてもコロナ禍の影響で業務が例年通りに実施できない状況にあるということで,データセットの準備に遅れが生じており納品が令和2年度中に間に合わないとのことであった。よって,当該データがまだ納品されておらず,これが次年度使用額の生じた一つの理由である。また,令和2年度は海外渡航のみならず国内の出張も不可能或いは自粛ということで,旅費として計上してた予算が未執行となった。これも次年度使用額が生じた理由である。 令和3年度における次年度使用額は,主に気象業務支援センターからのデータ購入及び国内での出張旅費への使用を計画している。
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